ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2011-01-12 15:23
変化するアジアの力の均衡
岡崎研究所
シンクタンク
『ウオールストリート・ジャーナル』紙12月10日付け社説が、「変化するアジアの力の均衡」と題して、台湾に重点を置いた中国脅威論を展開しています。すなわち、「ロシアが中国に戦闘機スホイSU-35を売却しようとしているが、これに勝るのはF-22(オバマ政権が生産を打ち切ったステルス戦闘機)だけなので、売却が成立すると、米国の同盟国・友好国の対中軍事バランス、中でも台湾のそれが不利なものとなるだろう。従って、米国がアジアで力の均衡を維持し、地域の安定の保証人であり続けたいなら、直ちに行動しなければならない。具体的には、一時的に米中関係は悪化するかもしれないが、SU-35に対抗できるF-16か、さらに強力なF-18戦闘機を台湾に提供して、台湾の軍備を強化すべきだ」と言っています。
ワシントンで高まる中国脅威論の一端を表す論評ですが、「中国の軍事的脅威」論には割り引かなければならない面も多々あります。専制主義と過度の官僚主義国家の常として、「見せかけだけ」(例えば、建造中の空母は補助艦隊を欠く等)の側面があるからです。ただ、外交的には「見せかけだけ」でも有効ですし、長期にわたる戦闘の場合、ものをいうのは質より量なので、中国の軍事力については真剣に対応策を考える必要があります。
他方、台湾と中国の経済相互依存性が深まるにつれ、台湾のエリートが自分たちの地位・利権の保証と引換えに大陸への行政権譲渡という誘惑にかられる可能性があり、そうなれば、中国海軍が外洋に出て行きやすくなり、米国太平洋艦隊の行動が制約され、周辺海域の通商ルートが脆弱なものになる等、アジアにおける力のバランスはそれこそ劇的に変化するでしょう。米国や日本はそうならないよう、台湾産品の関税引き下げや台湾企業による対米直接投資優遇策など、経済面での措置も実行していく必要があります。
また、「変化するアジアの力の均衡」ということなら、インドネシアが最近ASEANから少し引いた独自の大国路線を追求し始めたと見られることや、フィリピンにおいて中国からの兵器供与の見返りに中国艦船のフィリピンの港湾使用を認めようという動きがあることなど、対中宥和政策が強まる可能性があることも念頭に置く必要があるでしょう。更には、米国・NATOO諸国がアフガニスタンから撤退したあと、西側の対中央アジア・対南アジア政策をどうするのか、中国と国境を接するキルギスで米軍が賃借しているマナス空軍基地が有する戦略的価値は今後非常に高まるのではないか、などの点も考えておく必要があります。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会