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2010-10-27 07:43
自民は、補正を「小沢喚問」の人質にするな
杉浦 正章
政治評論家
自民党が民主党前幹事長・小沢一郎の証人喚問を補正予算審議への人質に取りたくて、うずうずしている。民主党が喚問に応じなければ、審議入りに応じない構えを取ろうというのだろう。しかし、補正成立遅延で影響を受けるのは、年末の資金繰りにあえぐ中小企業であり、一般国民だ。小沢問題の主戦場が司法の場に移った現在、国会における疑惑の解明は、まず政治倫理審査会で対応すべきで、自民党は証人喚問に拘泥すべきではない。喚問と補正をはかりにかければ、間違いなく補正の方が重い。小沢国会招致問題の前哨戦は、民主党が「政倫審招致」のカードを切り、自民党が「証人喚問でなければダメ」と切り返しているところだ。
自民党は、うその証言を偽証罪にできない政倫審でなく、偽証罪が成立する証人喚問の場に固執する。幹事長・石原伸晃も「小沢氏の証人喚問と補正予算案の審議を絡めて考えていないが、民主党の対応しだいでは、検討が必要になるかもしれない」と正直に人質作戦を漏らしている。しかし、自民党が野党になってからの審議拒否は、マスコミの袋だたきにあっているのが常だ。強硬姿勢は衆院補選の勝利を背景にしているのだろうが、2月の長崎知事選勝利後に、やはり小沢証人喚問問題で総裁・谷垣禎一が「今をおいてほかにない」と誤判断して、国会審議をストップ。朝日新聞などから「民意をはき違えている」と批判され、撤回している。石原は今回も同じ轍(てつ)を踏みそうな様子だが、状況認識が甘い。
第一、公明党は代表・山口那津男が「審議入りの条件にするのは少し違う」と腰が引けている。証人喚問は、全党一致が原則であり、自民党はたとえ“脅し”であれ、補正審議と絡めるのは無理がある。補正を人質に取って審議を拒否すれば、マスコミの矛先は自民党に向かうことをいまから警告しておく。現に、読売新聞も10月13日付の社説で「全党一致が原則の証人喚問の実施が当面難しいなら、まず政倫審の実現を図ってはどうか」と証人喚問にこだわっていない。民主党は野党時代にちょっとした事件でもすぐ「証人喚問」を要求し続けたが、ロッキード事件などと違って、小沢の場合は「政治資金規正法違反の疑惑」の段階であり、喚問を強行するには無理がある。憲法の3権分立の立場から言ってもおかしい。
たちあがれ日本の共同代表・与謝野馨が26日「小沢さんは刑事被告人になる予定で、裁判で争うべきことだ。国会に呼びつけて、大衆の臨時裁判みたいなことは、憲法から言えばやってはいけない」と述べているとおりだ。因果応報とはよくいったもので、ロッキード事件と絡んで1983年に発足した政倫審は、当時衆院議運委員長だった小沢が動いて、設置したものだ。小沢は、証人喚問は論外としても、政倫審には「補正予算の審議促進のため」とか、格好いい条件をつけて、出席せざるを得まい。政倫審がブーメランのように遠く迂回して小沢に戻ってこようとしている。国会も、主戦場は検察審査会の議決で、強制起訴となる裁判の場に移行すると観念すべきだ。自民党も補選の勝利くらいで舞い上がるべきではあるまい。
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