ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2010-08-23 07:36
小沢出馬なら民主政権は崩壊の危機に突入
杉浦 正章
政治評論家
火を見るより明らかなことが、小沢一郎擁立グループには分かっていないようなので、小沢が立候補したらどうなるかを説明しよう。まず「小沢立候補と小沢首相」の実現は、民主党政権が発足1年で崩壊過程に突入することを意味する。「小沢首相」では秋の臨時国会は「政治とカネ」で冒頭から紛糾し、審議は微動だにしなくなり、結局解散・総選挙に追い込まれる。民主党は大敗して分裂、大勝した自民党が政権に復帰する。民主党員はその覚悟が出来ていているのか。悪いことは言わない。全党あげて「殿ご乱心」の小沢立候補だけは諫めるべきだ。
「この人たちはいったい何をやっているのか」と朝日新聞が社説で小沢擁立グループを批判。毎日も「小沢氏擁立論、民主党の勘違いに驚く」と、強い調子で非難。読売は先頭切って「小鳩の総括と政策論が先だ」とやっているから、全国紙の社説が出そろった。圧倒的に小沢立候補の“愚痴無知”(愚かで知恵が浅いこと。仏教の三毒の一)を説いている。この論調は、民放コメンテーターらによっても受け売りされ、マスコミの非難大合唱に発展しつつある。民主党内からも、これ以上は名誉毀損になりかねないほどの表現で、有力閣僚や長老が批判を展開。外相・岡田克也は「起訴される可能性のある方が代表、首相になるということには 違和感を感じている」と、刑事被告人が首相になりかねないことを批判。渡部恒三は「残念ながら(小沢君は)諸悪の元凶だから、この人がいなくなれば、すぐ挙党一致できる。元凶が『挙党一致』などと言うのは、こっけいな話だ」と口を極めて非難した。
さらに渡部は、造船疑獄で吉田茂が法相・犬養健に指揮権発動を指示して佐藤栄作を救済した例を挙げ、「小沢君が首相になることは、指揮権発動どころの比ではない」と指摘した。その意味するところは、首相になることにより第5次検察審査会の起訴相当議決から逃れようとしているというのだ。首相になれば、憲法上刑事訴追を受けないで済むから、そこに逃げ込もうとしているというのだ。与党ですらこのような指摘があるのだから、野党は間違いなく臨時国会で大攻勢に出る。自民党は内心団扇太鼓を叩いて「小沢出馬」の実現を八百万(やおよろず)の神に祈っているに違いない。「小沢首相即政権奪回」となりうるからだ。
では、立候補が意味するところをシュミレーションしてみよう。代表選で小沢が負けた場合は、小沢の政治生命は完全に絶たれる。菅による「脱小沢」路線は完結して、幹事長人事での譲歩も不要となる。したがって小沢は、旗振り役の山岡賢次ら家子郎等を引き連れて党を割らざるを得なくなる可能性がある。一方、野党が垂涎状態で待ち構える「小沢代表」の実現だ。代表即首相だから、小沢は首相になり得る。しかし、首班指名の臨時国会は冒頭から大荒れに荒れる。首班指名に入れるかどうかも分からない。よしんば小沢が首相に指名されても、連日本会議や予算委員会で「政治とカネ」の追及が展開される。結局小沢は、解散・総選挙へと追い込まれるのだ。政局を読めないのでは屈指の政治家である山岡が「菅なら解散に追い込まれる」と強調するが、全く逆だ。
そもそも小沢は、国会審議に耐えきれるのか。小沢は過去に何度も首相になれるチャンスを自ら忌避してきた。一にかかって、自らの健康と心理状況・精神状態が審議に耐えられないと判断したからに他ならない。それが突然今になって「耐えられる」ことになったのだろうか。小沢自身の問題もさることながら、民主党議員はそれでいいのか。支持率10%台で発足する「小沢首相」の下で総選挙を戦う覚悟があるのか。民主党議席は、現在の308議席が確実に100議席前後にまで落ち込む事態が想定される。それでも小沢を担ぐのか。小沢擁立の意味を、ここまで読んでいるのか。要するに、小沢立候補が民主党を地獄に陥れることを理解しているのか。少なくとも小沢自身は理解しているはずだ。政界長老の塩川正十郎が「キャリヤーの誰よりもある小沢君だ。民主党の相談役的な立場から大人の対応をせよ」と立候補を戒め、小沢側近の藤井裕久が「あの方は冷静で合理的に考える」と不出馬を繰り返すのは、小沢をよく知るからに他ならない。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会