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2010-07-30 07:32
決め手を欠く小沢の「代表選」戦略
杉浦 正章
政治評論家
首相・菅直人も両院議員総会で平謝りとは情けない。姿を見せずに糸を引いた小沢一郎の高笑いが聞こえる。しかし、菅も、代表選出馬表明と執行部続投の方針だけは辛うじて表明できた。永田町の耳目は、小沢の動向に移行したが、大方の見方は「小沢は立てまい」というところに落ちつきつつある。勢い代理戦争となるが、「打倒菅」を打ち出すのか、幹事長・枝野幸男の更迭を狙った条件闘争になるのか、選択がつきかねているように見える。決め手を欠いているのだ。産経新聞によると、議員総会前に「小沢幹事長のままだったら、参院選で30議席も取れなかった、とは言っちゃいけないな」と執行部の一人がささやいたというが、これが菅の超低姿勢戦術を象徴している。「政治とカネ」のせいで負けたとは、おくびにも出せないのであろう。しかし、この菅の姿勢には、小沢に対する“未練”が残っているように見える。本気で代表選に臨まないように願っているのだ。そこには「政権とは、戦い取るものだ」という鉄則が欠けている。まだ小沢の出方が分からないのだろうが、菅には党内目線、それも小沢目線があって、国民目線がない。
小沢の沈黙にしびれを切らしたのか、渡部恒三が「9月に小沢君、堂々と立候補したらいいんじゃないか。菅君も堂々とやれ」とけしかけているが、小沢にしてみれば、「その手は食わぬ」だろう。先に指摘したように、代表選に出馬して勝ったら「一番嫌な首相のポジション」に就くことになってしまう。検察審による強制起訴などを考えたら、とてもできる選択ではない。ようやく取材記者にも分かって来たとみえて、主要紙の「出馬する」と断定する見方は消えつつある。民主党の党内情勢は、7月29日の外相・岡田克也による菅続投支持表明に加えて、前原誠司、野田佳彦らのグループも支持に回りつつある。問題は、いち早く支持表明したはずの鳩山由紀夫の威令が、例によって派内に徹底していないことだ。
側近の前官房副長官・松野頼久が、小沢支持グループ・一新会の例会で「鳩山は一新会に支えてもらった。今度は私たちが恩返しする番だ。一緒にやっていきましょう」と述べるとともに、小沢出馬を促したのだ。鳩山もなめられたものだが、逆に菅に対するけん制の意味も含めて、松野を使っているのかも知れない。「鳩山・小沢枢軸」はできまいが、できれば200人を上回る勢力だけに、この動きは無視できまい。しかし、小沢側も対抗馬擁立のめどが立たないのが実情だ。代理戦争を承知で、悪名高き小沢汚染が指摘される候補になり手があるかだ。樽床伸二、原口一博、海江田万里、田中真紀子などの名が上がっているが、菅が立候補表明しているのに、いまだに定まらない。たとえ候補を立てても、世論は菅続投支持の流れだ。首相になって短すぎることが“続投要望効果”を生んでいるのだ。
小沢の秘策は、8年ぶりに実施される党員・サポーター投票にあるとされている。初の党員参加の代表選は、1978年の自民党総裁選予備選で行われ、現職首相の福田赳夫を大平が破った例がある。その時の田中角栄の党員らへの働きかけはすさまじく、夜中の3時から電話をかけまくったので有名だ。福田は「天の声にも変な声がある」とぼやいて、本選挙を辞退した。これをつぶさに見た小沢が、党員・サポーター票に目をつけることはじゅうぶんあり得る。しかし、自民党の党員と異なり、若い層が多い党員・サポーターが、小沢の働きかけに応じるかといえば、むしろマスコミの動向に左右される傾向が濃厚だろう。小沢の秘策は、恐らく奏功しまい。小沢陣営は一見攻めているようで、決め手を欠いているのである。
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