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2010-07-15 11:02
中国とパキスタンの核技術協力の意味
岡崎研究所
シンクタンク
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の6月17日付で、ロンドン大学キングス・カレッジの Harsh V. Pant 教授が、中国が2基の原子炉を輸出することでパキスタンと合意したことを取り上げています。それによると、「中国のパキスタンへの原子炉輸出は、NPT非加盟国への核技術輸出を禁止する核供給グループ(NSG)のガイドラインに反するものであり、承認されれば核不拡散上問題だ。中国は今回の輸出は2004年に中国が NSG に参加する前に合意されたことだと主張しているが、2008年、米印が核エネルギー協力協定を締結した際、中国はパキスタンに原子炉を輸出する意図を明らかにしている。米がインドを贔屓するのなら、中国も同じことをするというわけだ」と指摘されています。
さらに、同教授は、「中国がこれまでもパキスタンの核兵器開発に協力してきたことは、カーン博士が認めており、両国の核協力は、核兵器国が非核兵器国に分裂性物質や兵器設計図を渡した唯一の例だ。しかも中国は NPT 参加後もこの協力を続けた、他方、パキスタンは当然、民生用核の利益を得たいと思っており、米印協定と同様の協定を米国に要求している。ブッシュ政権はパキスタンの過去の拡散を理由に拒否したが、オバマ政権の態度ははっきりせず、中国はオバマ政権なら突き動かせると計算している。これから NSG の会合が開かれるが、これは、米国が核技術輸出規則を強制する意思と力をまだ持っているかどうかが試される場になるだろう」と言っています。
ブッシュ政権時代、米国は、民生用原子力利用への保障措置だけでインドへの原発輸出を認める協定を締結しましたが、これこそが、パントのいう NPT 体制を「葬ること」につながる危険を内包していました。つまり、パキスタンがインドと同様の待遇を要求するのは目に見えており、米国がパキスタンの過去の行状を理由に拒否したとしても、中国がパキスタンの要求に応じることは当然予想できたはずです。この時に、いわばルビコン川は越えられてしまったと言えます。
「インドは拡散をしていない民主主義国だから良いが、パキスタンはだめだ」という米国の議論は、イスラエルの核に対する米国の態度も考えると、要するに、「良い国は核開発をしてもよいが、悪い国は駄目だ」という議論でしかなく、こうした議論で中国を説得できるか、非常に疑問ですし、パキスタンも納得するはずがありません。こうした政策にはもっと一貫性が必要です。なお、パントが、今回の原子炉輸出は NPT 体制を「葬る」一要因になる、としているのはやや大げさでしょう。インドも、パキスタンも、イスラエルも、NPT の枠外にあり、今後も加盟する可能性はないと思われます。
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