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2010-06-16 10:22
海洋覇権をめぐる米中の争いをどう見るか
岡崎研究所
シンクタンク
5月17日付けの『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙で、米「Claremont Institute」の Mark Helprinが、中国軍事力の太平洋進出に警鐘を鳴らしています。 ヘルプリンは、ハーバード、プリンストン、オックスフォ-ドで学びながら、英国のマーチャント・ネイヴィ、イスラエルの陸軍・空軍に勤務した異色の軍事評論家であり、その論旨は常に軍事現実的、保守的です。
ヘルプリンは、「中国は、1988年から2007年までに1人当たりGDPを10倍増したが、軍事費は購買力価格で21倍にした。ところが、米国はその間、対抗する全ての面で軍事力増強が遅れた。その結果、今の中国は、1,500の短距離ミサイルなどで米空母機動部隊の台湾接近を妨げる能力を持つに至っている。米国がF-22の生産を中止しなければ、まだしも制空権は維持できたかもしれない。米国側の台湾防衛能力が失われれば、台湾は武力の脅威だけで中国に屈し、香港のようになってしまうだろう。そうなれば、日本、韓国、東南アジア諸国、豪州までもが、米軍基地を廃止するなど、対中宥和政策を取るようになるだろう。こうなったのは、軍事力増強を怠ってきた今までの米国の政策の結果であるが、まだこうした事態を救う時間は5年か10年はあるだろう。しかし、そのためには、奇蹟的な指導力と意思が必要だ」と論じています。
米国の論壇は、中国の脅威を21世紀の国際情勢の最大の問題の一つと考え、それに対して警鐘を乱打する人々と、中国とは協調政策でやっていけると主張する人々に、二分されている感があります。そうした中で、「当面の脅威はテロリズムだ」とする主張は、暗に中国の脅威を直視することを避けるために用いられている傾向があります。
しかし、20世紀初頭のドイツの脅威に対する英国の反応が、「当初は単に憂慮だったのが、年を追って悪夢となった」ことを見ても、今の米国でも、時間が経つにつれて、中国脅威論の方が強まると予想されます。ただ、中国はスタートのレベルが低かったので、まだ10年、20年の余裕はあるかと思われましたが、ヘルプリンは5年、10年と言っており、確かに、事態の流れは予想以上に速いかもしれません。一つ興味深いのは、ヘルプリンが、台湾防衛がアジア全体の趨勢に及ぼす影響を重視していることです。従来から、どんな形であれ、米国が民主的な台湾を見捨てることになれば、東アジア、東南アジアにおけるアメリカのクレディビリティは地に墜ちると思ってきましたが、ヘルプリンは、もっぱら軍事的観点からではありますが、同じような判断をしているようです。
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