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2010-06-11 07:34
“宿敵”亀井を切り、郵政でも「脱小沢」の菅
杉浦 正章
政治評論家
郵政改革法案先延ばし決着は、半年にわたる首相・菅直人と金融・郵政改革担当相・亀井静香の路線上のバトルで、「菅が圧勝、亀井が完敗」の形で決着がついたことを意味する。前首相・鳩山由紀夫には効果てきめんであった亀井の“政権離脱”の脅しは、菅には通用しなかった。亀井は、政治的には“亀井切り”とも言える辞任に追い込まれたのであり、連立政権の特色であった「しっぽが胴体を振る」ミニ政党の“専横”は消滅し、菅体制が一段と強化される形となった。新聞は、本記がやっと朝刊に間に合う時間の辞任とあって、解説を掲載するまでに至らなかった。そこにネット評論の強みがある。亀井政治は、警察出身だけあって、“脅し”が基本。これまで鳩山に対しては、連立離脱を垣間見せるだけで、「勝負あり」の結論を得てきた。
これが、閣内にもあつれきを生み、副総理・菅や国家戦略相・仙谷由人と激しい対立関係を形作ってきた。その顕著な例が2つある。1つは、昨年12月初旬の補正予算をめぐる対立であり、もう1つは、3月の郵政法案そのものをめぐるバトルだ。いずれも経済路線上の相いれない対立に根ざしている。12月は、基本政策関係委員会において、亀井の大型補正による景気刺激策と財政規律重視の菅との対立だった。20分にわたり激論が戦わされ、菅は亀井を「財政出動が大きければ大きいほど良いと言うのは、恐竜時代だ」と批判。その後菅が電話しても、亀井が無言で切るという状況に立ち至った。「幼稚園児の喧嘩」と言われた。郵政法案をめぐっては、民放テレビ番組で、預け入れ限度額引き上げをめぐり亀井と菅がののしり合うという醜態を演じた。
限度額2000万円への引き上げを「聞いていない」とする菅と、「説明した」とする亀井の口論だ。限度額問題では、仙石も反亀井の急先鋒として参加、亀井批判を繰り返したが、結局鳩山は、亀井の脅しもあって、亀井案を丸のみにして、決着した経緯がある。こうした対立を根底に、郵政先延ばしの決着となったのだ。亀井にしてみれば、菅が首相になったとたんに、「まずい」と感じたに違いない。亀井はすぐに菅と会って、「郵政の速やかな成立の約束を取った」と説明しているが、恐らく菅は「今国会で」とは明言していまい。むしろ「今国会では処理しない」との腹を固めていたに違いない。首相決断の形で、自分は表に出ることなく、仙石や幹事長・枝野幸男を使って、亀井包囲網を形成。ついには“宿敵”を辞任に追い込んだ形だ。
菅には、政権離脱の脅しは通用しなかった。それだけ菅は、しぶとかったのだ。それも国民新党は連立を離脱しないのだから、もともと底は割れている話だ。菅が強気に出た背景には、世論調査の内閣への期待値が高く、参院選への自信が持てた、と言うことだろう。また世論も、郵政改革法案をめぐって消極論が強く、朝日新聞も「今国会廃案」を社説で主張している。全国郵便局長会や日本郵政グループ労働組合の選挙対策も、いまさら自民党を押すわけにも行くまい。選挙後の臨時国会での決着なら、納得せざるを得まい。こうして人事で「脱小沢」を成し遂げた菅は、選挙至上主義の象徴であった小沢一郎の郵政密着路線にもくさびを打ち込んだ。まさに郵政でも「脱小沢」である。
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