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2010-06-03 07:54
「菅代表」なら「闇将軍小沢院政」の影
杉浦 正章
政治評論家
首相・鳩山由紀夫は、自業自得の退陣で政治生命を絶たれ、「国難」は除去された。筆者が1月5日付で「鳩山は辞任せざるを得まい」と5月政局を予想したのと、寸分たがわぬ結果となった。しかし、驚くべきことに、小沢一郎はこの場面でも生き残った。幹事長を辞任しても、“闇将軍”として陰に陽に影響力を保つだろう。問題は、代表選挙で先行している菅直人が小沢との距離感を保てるかどうかだ。深入りしすぎれば、小沢院政の批判を受けよう。深入りしなければ、首相の座に着けるかどうか、定かでない。その状況に追い込んだのは、代表選日程を“奇襲作戦”のごとく極端に短縮した小沢戦略である。菅が政権を取っても、小沢院政の危うさはつきまとう。
鳩山政権成立後の菅の軌跡をたどると、小沢にいかに接近するかを基本としてきたことが分かる。とりわけ、昨年末に鳩山の資質が問われ始めてからが顕著だ。象徴的なのは、小沢邸の新年会。珍しく菅が出席、何と万歳三唱の音頭を取ったのだ。その時点での菅の狙いは、財務相・藤井裕久辞任情報を事前にキャッチし、小沢の心証をよくすることであった。効果は抜群で、財務相の後任の座を獲得したのだ。その後の会合などでも、小沢に伝わるように小沢賞賛を続けている。いよいよ鳩山が危なくなってきた3月9日夜の議員らとの会合では、自分が首相になった場合の構想を延々と語った上に、「10年前に小沢さんの手法を学んでいたら、自分の政治センスは3倍違っていた」と褒めちぎったという。すぐに小沢に伝わったそうだ。菅にしてみれば、150人の小沢軍団の票は垂涎の的。それゆえに、政権成立以来、小沢“たらしこみ”をつづけているのである。一方で、目立つことは極力避け、普天間問題にも一言も言及せず、待ちに待ったのだ。
その小沢だが、とりあえずは「死んだふり」をしている。記者団に対して「皆さんに会うのは、これが最後」と涙ぐんでいたと言うが、実態は違う。鳩山のように政治家引退宣言をしたわけでもない。引退するなら、代表選に向けた小沢グループの動きも止めなければならないが、全くその気配はない。小沢は恩師田中角栄が、大平正芳、中曽根康弘に闇将軍として院政を敷いたケースを念頭に置いているに違いない。生き強いのである。小沢の戦略としては、代表選までの期間を実質3日間と極端に短くすることにより、立候補者が次々に立つことを押さえ、少しでも影響力を行使できる代表を作りたいのであろう。そこには、鳩山退陣の総括や、普天間、消費税など、本来なら政権政党として避けて通れない政策論議などをする意図は全く感じられない。ひたすら人事戦略あるのみである。したがって今回も、小沢側に付くか、反小沢になるか、に人事の基準点が出来てしまったのである。
その人事の動向だが、自らに反抗する者への報復が露骨で、厳しいのが、小沢政治の特色であり、その意味からは、前原誠司や、岡田克也や、野田佳彦らへの支持は論外であろう。小沢の田中真紀子擁立説があるが、とても首相として国会答弁を切り抜けられる器ではあるまい。総務相・原口一博はまだ若く、本人が否定している。消去法でいくと、小沢にとっては菅しか残らないことになる。党内は、渡部恒三が「社長が辞めれば、副社長がなるのが筋」と菅支持の先端を切って、 前原、野田両グループも菅支持に動きつつある。横路孝弘グループや岡田克也も菅支持に動いている。旗幟を鮮明にしない前原の動向が焦点だが、菅が先行して、リードしつつあることは、確かだ。東京新聞は「後継、菅氏が確実」と踏み切っている。菅が首相になって、支持率が好転するかだが、劇的な好転はないにせよ、それなりに上昇して、参院選挙への影響も出てくるだろう。リフレッシュによるプラス・イメージがどうしても出てくるからだ。
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