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2010-05-13 07:45
小沢事情聴取は、検察首脳の“政治配慮”か
杉浦 正章
政治評論家
しぶとさは超一流の幹事長・小沢一郎から新たな供述を引き出せるかというと、いくら東京地検特捜部でも難しかろう。検察審査会の起訴相当議決からわずか2週間で、地検が小沢の事情緒聴取に踏み切った背景には、明らかに参院選挙への影響を考慮して、テンポを速めると言う色彩が濃厚である。恐らく上層部の意向を反映したものだろう。小沢はやはり参院選への影響回避を狙って、衆院政治倫理審査会への出席を考慮している。言い放しで済む政倫審を“活用”しようというわけだ。しかし、事態は小手先の対応で選挙への影響を回避できる段階は過ぎた。
一部民放テレビが「検察は絶対起訴する」との興味本位の見方を紹介していたが、全国紙の社会部記者の見方は、地検の事情聴取による新展開に懐疑的だ。読売は「検察内部では『新たな供述を引き出せる可能性は低い』との見方が強い」という。朝日も「よほどの新証拠がない限り、検察が自らの処分を覆すことはないとされる」との判断だ。ゼネコンからの大規模な事情聴取も行わない見通しだという。それにもかかわらず検察が小沢と秘書3人の聴取を早期に要請した背景には、何があるかだが、日経によると検察首脳は聴取要請を巡る事情について「参院選を考慮して刑事処分を先延ばししたら、『民主党に肩入れした』と言われかねない」と述べているという。
筆者は、そこに政治的な判断が“逆作用”している気がしてならない。そもそも検察上層部は、小沢立件にはやる特捜部の現場を押さえて「嫌疑不十分」で不起訴とした構図だが、そのこと自体に不信感が残るし、本来なら政治的な影響などは度外視して行うのが、検察の捜査だろう。そこで政治の側、つまり民主党政権の考えることを推理すれば「不起訴を再確認するなら、早いほどよい」と言うところに落ちつく。就任時から指揮権発動を容認するような発言をしている法相・千葉景子あたりが、検察トップに「不起訴なら、早く結論を」と促してもおかしくない場面だ。闇の「準指揮権の発動」となるが、筆者の感知する限り、歴代政権の法相はそれくらいの圧力を検察首脳に掛けたと見られるケースが多い。
しかし、選挙まで早ければ2か月を切った時点で「選挙への影響」もないものだろう。小沢の政倫審への出席も、重要法案成立に加えて、参院選への影響を考慮したものとみられる。しかし、はっきり言えば、世論は小沢のクビを求めているのであって、記者会見と同じ弁明の繰り返しを求めては居ない。辞任しない限り、参院選への影響は回避できないのが実態なのだ。それに、偽証罪になり得る証人喚問でなければ、効果は薄い。時間的制約もあり、小沢の言い放し発言を拝聴するのがオチだ。
検察が今後テンポを速めて、月内にも「不起訴」の判断を再度下した場合だが、再びボールは検察審に戻る。先の議決は11人全員が「起訴相当」としたが、逆に「秘書の独断であり、小沢の関与がない」という判断の“新証拠”が出ない限り、「起訴相当」を8人以上の賛成で再議決する可能性が高い。そうなれば小沢は強制起訴となる。議決が選挙の前になろうが、あとになろうが、有権者はそれを期待する投票行動に出るだろう。普天間問題といい、「政治とカネ」といい、この政権は堤防の水漏れを片手で押さえてもまた別の個所から水が噴出して、両手両足を使っても間に合わない状況に陥っている。
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