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2010-03-24 07:35
崩壊過程に入った小沢神話
杉浦 正章
政治評論家
生方解任撤回と小林離党問題は2つの流れを作り出した。1つは小沢強権政治にアリの一穴が空いて拡大、奔流となって溢れ出したこと。もう1つは一枚岩の小沢・鳩山体制に確執が生じ始めたこと。これは首相・鳩山由紀夫の「小沢切り」に発展する萌芽を意味する。つまり首相・鳩山由紀夫には、小沢を切らなければ支持率が回復しないことに、ようやく気づき始めたふしがあるのだ。小沢神話が崩壊過程に入ったことを意味するが、小沢のしぶとさは、これから発揮されよう。小沢は“辞任カード”を切るにしても、「院政確保」をいかに達成するかの勝負に出るだろう。鳩山政権を襲った生方解任と小林離党問題は、内閣支持率を調査によっては30%と危険水域の20%をうかがうところまで急落させた。登りのないジェット・コースターである。もちろんメディア挙げての「言論封殺」批判・「政治とカネ」批判が響いたのは言うまでもない。
これに危機感を抱いたのは、いわれているように小沢ではあるまい。むしろ鳩山の方だろう。鳩山は3月23日朝から2つの動きに出た。小林居座りについては、記者団に「党で何らかの対応をする必要がある」と述べ、党側での処分を示唆。生方問題については、本会議場でこれ見よがしに生方と会談、「穏便な」対処を約した。小林についても、生方についても、小沢に電話して調整したという。鳩山は、生方について当初は「党外での発言」を問題視して解任論だったから、例によって手のひらを返したことになる。小沢も、自らの強権政治の象徴となる大誤算だけに、方向転換をせざるを得なかったのであろう。一方で、小林解任問題について小沢は、鳩山からの電話自体を否定した。記者会見で「総理・代表がそういうことでいちいち指示することはあり得ない」と否定した上に、「自分自身で判断すべきだ」と強調した。ここで小沢と鳩山の小林問題への対処がくっきりと分かれた。
原因は、読みの甘さと鋭さの問題だろう。鳩山は表面だけ見て、小林の党としての処分を考えたのだろう。自分に飛び火することなど、とても考えが及ぶ政治家ではない。せいぜい小沢にはね返る程度と見たのであろう。ところが小沢は、小林問題は必ず「小鳩体制」にはね返ると読んだに違いない。これは脇の甘さと動物的嗅覚の差でもあろう。この見方の相違は、今後の政局を見る上で欠かせない。両者の確執として発展してゆく可能性があるからだ。鳩山側近の間では、閉塞状況を打破するには「小沢を切るしかない」という生々しい声が、次第に強まっているという。たしかにこのまま小沢が居座れば、参院選挙の敗北は必至であり、責任問題は小沢だけでなく、鳩山にも降りかかる。敗北の責任を取って辞任せざるを得なくなるのは、火を見るより明らかだ。しかし鳩山サイドも「小沢切り」が「鳩山切腹」に連動する可能性があることを分かっていない。
いずれにせよ、生方・小林問題は民主党内力学に大きな影響をもたらし続けるであろう。注目点は、政権成立以来当たるべからざる勢いであった小沢強権政治が、初めて崩れ始めたことであろう。土手から水が溢れ、奔流となって土手を崩れさせてゆく過程へと発展する、かも知れない流れである。生方の解任をやめても、この流れも、支持率低下も、止まらない。反小沢の渡部恒三からは、はっきりと辞任要求の声が上がり、閣僚も前原誠司が「誰もけじめをつけていない。そこに大きな問題がある」と事実上辞任要求に踏み切った。こうした動きは内閣支持率が20%台に落ちると、激流となってほとばしるだろう。それは近いと見る。
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