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2010-02-15 23:32
ボストン・ティー・パーティー
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
アメリカ独立戦争の引き金ともなったボストン茶館襲撃事件(これは日本語訳で、原語ではこの事件そのものを、Boston Tea Partyという)にあやかったボストン・ティー・パーティーが、反オバマ色を色濃く帯びたポピュリスト運動として、米国で広範な支持を集めているようだ。実のところ、ポピュリストの標的になるような特別な政策をオバマが掲げている訳ではない。人種政策にしてもかなり穏当な線を出ていないし、金融危機対策にしても左右双方から不満の声が出たほど「生温い」ものだという見方もある。アフガニスタン派兵にしても、増派と同時に引き上げ時期の公約という、どちらにも偏しない(というと聞こえは良いが、実は中途半端な)決断であった。
ならばなぜ、ポピュリストの標的になるのか。要するに、引き続く不況と閉塞感だという見方が強い。ワシントン・ポストとABCの世論調査によれば、現政権への不満は3分の2に及ぶという。しかも中央政府が使う税金の半分以上が無駄に使われていると感じているとも。鳩山さんも、これを聞いたら少し安心するだろう。しかし、不満のはけ口をホワイトハウスとワシントンに向けるというのは、日本で自民党から民主党に乗り換えたというのとは、ひと味違う。というのも、米国には、3割とも5割とも言われる反連邦主義者が存在し、中央政府の施策は各州の自治権に対する侵害だと即座に反応するメンタリティが存在するからだ。それがポピュリズムと野合する一つの典型例がティー・パーティーだ、と見る人も少なくない。
もともと小さい政府で地方分権というのは共和党のたてまえだから、長年の民主党の牙城マサチューセッツの上院議席をとった勢いで、ティー・パーティーにも肩入れしきり。ワシントンでの大集会には基調講演にあのサラ・ペイリンを担ぎだした。「あの」というのには訳があって、ご記憶の方も多いと思うが、先の大統領選でマッケインの副大統領候補として戦ったアラスカ州知事(当時)だ。アンチ・エリーティズムというか、モノを知らないのは、先の麻生総理も真っ青という位の逸話の数々だった。今度の演説も「フツーの」人間が売りのようなところがあって、ワシントン・ポストのコラムニスト、デイビッド・ブローダーあたりは、すっかりめろめろになって「ペイリン侮り難し」という記事を書いたくらいのものだった。
が、皮肉なもので、翌日のポストは世論調査の結果として、「ペイリンは大統領に不適」と答えた人が55%に及び、支持率の方は34%に落ち込んだと報じた。このあたりもティー・パーティーが伝統的な解釈の範疇に収まりきらない所ではあるのだが、これが多くの人の予想するように一過性の不満のカタルシスに終わるのか、それとも何らかの形でオーガナイザーが出現するに至るのか、何とも解らない所も面白い。
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