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2009-12-22 08:07
民主党の「マニフェスト選挙」は破たんした
杉浦 正章
政治評論家
懸命に独自色を出そうと首相・鳩山由紀夫が主導権発揮を目指して、いじましい努力をして見せたが、結局幹事長・小沢一郎の要求の丸のみだけを辛うじて回避したに過ぎない。鳩山の“決断”であるガソリン税率維持は、天下り人事、赤字国債増発とともに大きなマニフェスト違反である。朝日新聞の今朝12月22日付の社説とは180度異なるが、民主党主導による「マニフェスト選挙」は、ここに完全に破たんした。もう参院選でマニフェストを提示しても、国民の信用は得られない。これにより、内閣支持率の急落傾向は、鳩山の首相としての素質に根ざしているだけに、止まらないだろう。問題は民主党支持率が内閣ほど落ち込んでいない点だが、筆者は小沢政治の欠陥が次第に露呈して、内閣支持率に遅れて追随すると見る。
内閣支持率が急落して、政党支持率がほとんど動かない傾向は、政治的に興味深い分析テーマだ。内閣支持率は、朝日が前月比14ポイント、読売1カ月で8ポイント、毎日新聞は3カ月で22ポイントの下落だ。これに対して民主党支持率は、毎日、朝日が前回比4ポイント減、読売1ポイント増と変化が少ない。「100日を迎える鳩山政権」と題する朝日の社説は、内閣支持率の急落と民主党支持率の高水準維持の矛盾を分析している。「この数字をどう読み解くべきか」として、(1)有権者が総選挙を通じてじかに名指しした政権である、(2)マニフェスト選挙がすっかり根を張った、(3)マニフェストは次の総選挙まで政権党を基本的に縛ることになり、総選挙と関わりなく首相の首をすげ替えた自民党のやり方は契約違反となる、と主張している。この社説はいささか荒っぽい。誤判断もある。有権者が総選挙を通じて名指しした政権は、自民党政権でも同じことだし、首相の首をすげ替えることが契約違反とは、憲法に照らしても噴飯ものの論議だ。
とりわけ朝日の言うように「マニフェスト選挙がすっかり根を張った」だろうか。筆者は逆に、マニフェスト選挙が事実上の破たんを来したとしか思えない。有権者の多くは、もうマニフェストという言葉にすらアレルギー反応を起こすのではないか。天下り人事の臆面もなき実施、増発すれば責任を取ると鳩山が述べてきた赤字国債の空前の大増発、ついには「節約で賄う路線」が破たんして、最大の目玉の暫定税率は「廃止」でなく「継続」だ。まさに「マニフェスト詐欺」(自民党総裁・谷垣禎一)そのものではないだろうか。それも鳩山自身の決断でなく、小沢の“助け船”でようやくこぎ着けたものだ。政治の現実を深く理解しないで、観念論で論説を書くと、誤判断する。要するに、朝日の社説は政党支持率が内閣支持率に連動しない理由を無理にこじつけて、なお民主党を評価したいのだ。「内閣は駄目だが、まだ民主党が残っている」と言いたいのだ。
それではなぜ支持率が連動しないかだが、一にかかってマスコミが政府を叩いて、民主党を叩いていないことに尽きる。調査の設問で「内閣支持率」と聞けば、鳩山のふがいなさを意識した回答となるのであり、「民主党支持率」と聞けば、これまでのところ党運営で目立った動きや醜聞がないから、それなりの回答をするに過ぎない。もともと内閣支持率と政党支持率は必ずしも連動していないのだ。この傾向が続くかというと、続かないだろう。最大の理由が小沢政治にある。小沢は「政策は政府に一元化」と唱えてきた方針を、優柔不断な鳩山にしびれを切らして、大転換した。「予算要望」で政治の前面に躍り出たのだ。これは鳩山に任せておけないという宣言でもあり、これからは波風が直接小沢に向かうだろう。とりわけマニフェストの欺瞞(ぎまん)性露呈は、とりもなおさず民主党政治そのものの欺瞞性であり、有権者もやがてこれに気づくだろう。また民主党内で反小沢・非小沢の動きもやがては台頭する方向にあり、これが党内抗争になれば、イメージダウンにもつながる。もちろん小沢をめぐる政治資金疑惑も次々に表面化しており、「なぜ僕だけなんだ」と検察を批判しても、その“幼児性”を嘲笑されるだけだ。一方で、自民党の支持率も低迷の極みだ。読売に至っては1%減の18%だ。無理もない。有権者の眼中にないからである。総裁以下存在感がなく、いまのところ“無視”されているのだ。民主党離れしようにも受け皿がないのだ。
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