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2009-12-14 07:29
鳩山秘書起訴後の展開はどうなる
杉浦 正章
政治評論家
鳩山偽装献金疑惑は東京地検特捜部が来週、元公設第1秘書を政治資金規正法違反の虚偽記載容疑で在宅起訴し、首相と元政策秘書は嫌疑不十分で不起訴処分とする方針が固まった。巨額の母親からの資金移転も、贈与なら贈与税を修正申告して支払う方向だ。首相・鳩山由紀夫は上申書を提出するだけで、事情聴取は免れた。問題は現政権に明らかに“政治的配慮”を加えた甘い検察の幕引き策に、政局と国民世論がどう反応するかだ。佐川急便事件における金丸疑惑の略式起訴の時のように、猛反発が生ずる要素がある。展開によっては、鳩山は事実上の“死に体”に近くなり、通常国会で行き詰まる可能性がある。野党にとっては、首相が交代するよりも攻めやすい状況が現出することになる。
検察ほど上部権力に弱く、弱者に威圧的、強権的な捜査機関はない。マスコミなどから「検察ファッショ」とささやかれるほどだ。幹部の機嫌を損ねたら最後、出入り禁止を喰らい、取材できなくて泣いたマスコミも多いのだ。その検察が鳩、山に極めて甘い幕引きをしそうだという。甘いという理由の第一は、鳩山から事情聴取をせずに、上申書だけで済ませることだ。鳩山が国会で答弁したことだけを上申書に書けば、「結構」なのらしい。しかし、国民の目に映るのは、「母親、首相、秘書」ぐるみの「脱税疑惑」でしかない。母親がなぜ36億もの資金を現金化したかである。誰が見ても法の目をかいくぐって、鳩山兄弟に月1500万ずつ渡すためとしか思えないし、それを実行してきたのだ。また鳩山が虚偽献金の原資は自分の資産と発言してきたものが、母親の資金1億が入っていたことも問題だ。加えて合計11億もの資金を、「驚いた」で済ませようとしていることなど、疑問点は山ほどあるのに、事情を聴取して解明しようとしない。これで正義が成り立つのだろうか。早い話が、刑事処分は「秘書がやった」の主張がそのまま通ることになる。
この甘い刑事処分への反発は相当激しいものになりそうだ。まず一般国民に「正直者が損をする」という風潮が浸透する。納税意識が損なわれ、モラルハザードを招くことになる。国民の政治への不信につながり、不満はうっ積する。これが目に見えないようだが、一番大きな問題だ。国税当局も、自らにはね返ることを覚悟すべきだ。次に、このような空気を背景に具体的な検察批判が生じる。読売新聞が社説でいみじくも指摘しているように、金丸の場合は本人に事情聴取せず上申書提出の略式起訴にとどめた結果、何と4万件にのぼる告発がよせられたという。鳩山の場合も、相当数の告発がなされよう。恐らく検察審査会はこうした風潮を反映して、「不起訴不当」や「起訴相当」の議決を行う可能性がある。同審査会の議決が2度行われれば、自動的に裁判所の指定弁護士が公訴を提起し、公判が開かれることになる。加えて、野党にとっては、参院選挙に向けて、願ってもない好材料を入手したことになる。在宅起訴とはいうものの、罰金刑で済む略式起訴ではない。公判請求が行われるのであり、その過程で問題点は次々に明るみに出るだろう。
幹事長・小沢一郎の秘書の公判と首相秘書の公判が相前後して始まるのである。政権へのダメージは計り知れないものがあろう。しかし鳩山は「私に対する司法の判断を待ち、その結果に基づき、首相としての使命を果たしたい」と、まるで辞任する気配がない。問題の深刻さなど普天間問題と同じで、理解の外にあるのだ。そして加藤紘一の秘書が脱税容疑で逮捕された際には「もし鳩山由紀夫の秘書が同じことをすれば、国会議員のバッジを外す」と発言して、加藤を議員辞職に追い込んだケースが、何度もブーメランとして戻ってくるだろう。今後支持率は低下の一途をたどり、50%を割る日も近いだろう。元官房長官・町村信孝がテレビで鳩山について「一日で相手によって白黒と別のことを言う特技を持っている。軟体動物のように相手に合わせる。そしてそのこと自体気になっていない」と、まるで普通の人間でないような発言をしたが、その通りだ。自民党にとっては有り難いことだろう。通常国会の本格論戦では、故人献金、普天間、財政経済対策をめぐって、必ず答弁の矛盾が発生、立ち往生するのは目に見えている。政権は首相答弁だけで半死半生になる方向だ。これに小沢が気づき、首相を岡田克也に交代させた場合、民主党がリフレッシュしてしまうのだ。蛇の半殺し状態のまま鳩山政権が続き、参院選にもつれ込むのが野党にとっては最上の策と言える。
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