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2009-10-31 01:28
オバマ来日ではAPECを前面に
河東哲夫
自営業
あと2週間でオバマ大統領が日本にやってくるが、これは今後7年間のアジア情勢の基調を定める非常に重要な訪問だと思う。オバマ政権はこの時に受けた印象を、今後の対アジア政策の基礎に置くだろうからである。今とりあえず感じていることを書いておく。普天間とかいろいろ難しい問題を抱える日本は、「とりあえずこの場を凌ごう」とせず、正面から米国政権との話し合いに取り組むべきである。これからの7年間で中国の力はますます増大するだろうから、その前に大枠を決めておいた方がいい。日本側は自らの限界を認識しつつも、どうしても「対米対等」を言いたくなる傾向がある。しかし、「対等」になるかどうかは、日本が自ら何をやるかにかかっているのだ。現在のように不利な条件下にある米国は神経質になっており、「日本も米国離れをしようとしている」と思いこむと、その誤解をほぐすために日本が払う対価は非常に大きくなる。
「何を言っても、それが正論ならば、米国は耳を傾けてくれるだろう」と思うと、そういうことはないので、米国人もけっこう感情的なのだ。「何を言っても日米関係は大丈夫だ」と、心のどこかで思っているとしたら、それこそ対米依存感情なのではないか?既にこの1カ月CNNで、離婚裁判やイルカの殺戮をめぐって20年前を彷彿させる「日本は異質」キャンペーンが展開されたし、日中韓関係に不和の種を撒くことも容易なことなのである。一旦ネガティブ・キャンペーンが展開されると、日本はいくら正論を言っても、多勢に無勢で負け、回復するのに数年はかかるダメージを受けるであろう。
オバマ大統領の来日では、「日本は何々をできない」というネガティブな問題を前面に出すべきではない。そんなことをすれば、オバマは日本の後訪問する中国と前向きなことについて合意を打ち出し、それによって世界は米中で動いているかのごとき印象を世界中にばらまいてしまうだろう。日本は、米国と何か共にできること、つまり前向きなことを前面に出すべきであり、それはアジアと米国の間の運命共同体的関係の確認であろう。日米安保は東アジアの政治的安定を保証し、日米が資本・技術・市場を提供して東アジア諸国の経済発展を助けてきたからである。
アジアでの協力促進については、日米間の最大公約数としてAPEC(アジア太平洋経済協力会議)がある。「東アジア共同体」ばかり前面に出すと、日本は米国を入れるかどうかの問題で事前準備の精力を使い果たしてしまうだろう。米国も重視しているAPECを前面に出すのがいいだろうと思う。APEC首脳会議は2010年横浜で、2011年米国で行われる。APECを前面に出して、欧州のOSCEのような政治面での協力・信頼醸成措置も含めた広汎な傘として扱い、その中で日米安保、日中韓協力、東アジア共同体、東アジア首脳会議等を位置づけていけばいいのだと思う。これから更に重要性を増すアジアにおいては、米国はアジアの重鎮であるばかりでなく、価値観を共有する日本に寄り添っていてもらいたいのである。米国に対して断ることばかりを対等な関係の証左とせず、米国と共に何か良いことをやることを対等な関係の象徴とした方が、よほど健康的だし、コンプレックスのない関係なのだろうと思う。
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