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2009-10-26 07:42
鳩山内閣は、3大虚飾で追い込まれること必至
杉浦正章
政治評論家
近頃は、「嫁いびり」より「婿いびり」がはやりだしたというが、筆者も「鳩山新世帯」を、“しゅうとじじい”のように「婿いびり」するつもりはない。しかしことは国家の命運を左右する内閣の問題であり、“長い目”なんかでみていたら国が破たんする。鳩山政権は外交・財政・政治資金の3分野で黙っていられない“虚飾性”が浮かび上がってきている。具体的には対米外交、赤字国債の発行額、鳩山故人献金だ。いずれも当初は政権に未熟なるが故の素人っぽさと理解していたが、なかなかどうして確信犯的である。今日から始まる臨時国会で自民党もこの3大虚飾を突くだろう。
まず虚飾の1つ、赤字国債の発行額だ。内閣は鳩山以下、国家戦略相・菅直人、行政刷新相・仙谷由人も「新規国債発行額を2009年度の麻生内閣の当初予算と補正予算の合計発行額44兆円以下に抑える」としているが、これは5兆円以上のサバを読んでいる。なぜならそもそも麻生太郎の組んだ09年度予算は、当初予算の88兆に補正予算の14兆を加えた合計102兆である。その102兆に対する国債は44兆であり、国債比率は43%となる。鳩山内閣の概算要求95兆円を例えば90兆円に圧縮した場合の43%は39兆円であり、「39兆円以下に抑える」としなければ、公約通り麻生内閣を下回る国債発行額とはならない。それを44兆円というのは5兆円というサバの読み過ぎである。加えて補正を3兆円斬り込んでいるが、これは事実上赤字国債を来年度予算に回すことになり、これを加えれば8兆円のサバを読んでいることになる。国債発行額の操作をまやかしで行ってはいけない。これを“素人政治”のせいにするわけにはいくまい。政権には専門家やアドバーザーがいるのであり、確信犯的に赤字発行額をいまから拡大解釈して、言い訳を通りやすくしているとしか思えない。
つぎに外交・安保政策のまやかしである。対米関係の基本について首相発言が揺れに揺れているのだ。右から左に180度回転していると言ってもよい。鳩山は10月10日の日・中・韓首脳会談で「今までややもすると、アメリカに依存しすぎていた日本だった。日米の同盟は重要だと考えながら、アジアの一国として、アジアをもっと重視する政策をつくりあげていきたい」と明言して、東アジア共同体構想からの米国排除、脱米入亜とも取れる発言をしている。それが半月後の25日の東南アジア首脳会議では米国がその場に参加していないにもかかわらず「日本の新しい外交政策として日米同盟を外交の基軸に位置づける。同時に東アジア共同体のビジョンを掲げる」と、米国に“擦り寄る”ような修正発言をした。国務省高官が「いま一番の難題は中国でなくて日本」と述べるなど、米政府の普天間基地移転問題に関する強い反発に、ようやく自分の過去の発言の問題点に気づいたのだろうか。それにしても普天間の混迷はすべて首相の発言のぶれに由来している。選挙中は「最低でも県外移設」が「時間というファクターによって変化する可能性は否定しない」と移転容認。最近では「3党合意で出発した連立政権ですから、県外移転が一番重い基本」とまた変わると言った具合だ。ようするに、その場その場を虚飾で取り繕い、結果としてぶれているのである。鳩山は麻生がぶれると口を極めて批判したが、赤字国債といい、日本郵政社長人事といい、これほど国策の基本がぶれる首相があっただろうか。
そして最後に自らに確実に降りかかる政治献金虚偽報告の問題だ。朝日新聞に寄れば、匿名献金が鳩山家から行われていたというショッキングな事実が明らかになった。偽装総額は2億円に達したという。鳩山家とは誰であるかは特定はされていないが、誰でも母親の顔が思い浮かぶ。つぎに浮かぶのは、いわゆる「故人献金」も母親のカネではないかというところだろう。もし匿名献金も「故人献金も」母親からということになれば、当然国会における参考人聴取か証人喚問の対象となり得る。86歳の母親は入院して、がんで闘病中であるようだが、ロッキード事件の際は、衆議院予算委員会が1977年に児玉誉士夫を病院で尋問(臨床取調べ)している。相続税、贈与税の脱税疑惑も可能性が強まってきた。自民党がいくら敗戦ショックの最中だとは言え、ここを突かないはずがない。加えて元秘書によると、虚偽献金は父・鳩山威一郎の時代から続いていたという情報もある。鳩山は「捜査中なのでコメントできない」を繰り返しているが、国会審議では絶対にこれは通用しない。このトラバサミを鳩山が抜け出る方途があるだろうか。まず考えられない。あるとすれば法相・千葉景子が指揮権を発動して、検事総長に捜査をストップするよう命じることだけだ。しかし検察は黙っていまい。おそらく検事総長は辞任で対抗する。次の検事総長を任命しても指揮権を発動すればまた辞任だ。そんな事態になれば内閣は総辞職か解散しかなくなる。臨時国会はこれら3大虚飾を軸に、鳩山政権が追い込まれていくことは確実だ。
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