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2009-10-21 07:43
怨念の「郵政票」小沢の掌中に
杉浦正章
政治評論家
日本郵政社社長・西川善文の辞任に今朝のマスコミ全紙の目が集中しているが、もっと深い「事の本質」を見逃している。それは「郵政票」をめぐる民主党対自民党の戦いに最終決着がついたということだ。西川辞任はその象徴に過ぎない。郵政の組織票が自民党田中派の流れを汲む幹事長・小沢一郎の手に“戻る”ことになる。将来的には小沢は自民党時代に最強の選挙マシンであった旧特定郵便局票を今後さらに組織化・強化して、盤石の地盤を築こうとしている。全国一律サービスとは、全国津々浦々まで小沢の選挙マシン化するということだ。民営化の流れを止め、「民から官」へと流れを転換させる「郵政事業の見直しに関する基本方針」を20日閣議決定したのも、小沢と金融・郵政相・亀井静香の勝利宣言にほかならない。
なぜ勝利宣言かというと、小泉の郵政改革は、「自民党をぶっ壊す」と宣言したことが物語るように、自民党の田中派的なものを打ち壊すところにも狙いがあった。その象徴が郵政票だ。旧特定郵便局長は田中角栄が築いた田中派の選挙基盤であった。小泉郵政改革の実現は、旧福田派の田中派に対する勝利宣言でもあったのだ。その結果、郵政改革に反対する旧特定郵便局長らが完全に自民党を離反して、国民新党と民主党に傾斜していったのだ。総選挙に先立って、民主党代表の小沢と国民新党代表の綿貫民輔は全国郵便局長会会長・浦野修と会談、選挙協力で合意している。「郵政票」が野党共闘に流れることになったのだ。合意文書では、民主党が政権獲得後に郵政民営化の抜本的見直しに取りかかることを確約している。
図式は、旧田中派対福田派の戦いが、郵政改革で福田派が圧勝し、こんどは小沢が圧勝したことになる。怨念の確執が底流で続いているのだ。小泉の腹心竹中平蔵が民放テレビで「民主党も国民新党も小泉さんにこてんぱんにやられた。その恨みを引きずって何かわけの分からないことをやっている」と述べているとおり、“意趣返し”の側面があるのだ。その証拠には、閣議決定も、民営化凍結と4分社化取りやめ、銀行保険の全国ネットワークを残す方針以外は、何も定まっていない。まさに政権成立以来続いている「旧自民党政権打ち壊し」の一環にすぎないのだ。
しかし、小沢の狙いは別にある。民営化で弱体化した集票体制の再構築だ。株式会社の形は残すわけだから、旧特定郵便局長らの選挙活動も自由に行える。政治活動が自由ならこれほど強いものはない。これが最大のポイントであり、地域に影響力の大きい旧特定郵便局長らとの“親交”も一段と増してゆくだろう。全国の郵便局を集票マシンとして活用できれば、民主党の選挙基盤は“風頼り”から一段と強化され得るのだ。小沢が一切この問題で発言せず、西川辞任にも言及しなかった背景には、マスコミの見過ごした、またはマスコミに気づかせない、深い意味があるわけである。それにしても官僚主導を打ち出しながら、郵政官僚回帰の流れを作るとは、鳩山政権の矛盾撞着も極まった。テレビで前鳥取県知事・片山善博が「郵政官僚の高笑いが聞こえる」と評していたが、もっともだ。
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