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2009-09-25 12:52
危うさだけが目立った鳩山の外交デビュー
杉浦正章
政治評論家
ホワイトハウス詰め記者だった頃、フォード大統領の報道官から「大統領と各国首脳の会談は、時間を見れば軽重が分かる」という話を聞いた。時間の配分は、超多忙な大統領を抱えたホワイトハウスの外交戦略のポイントだというのである。そこからみると大統領・オバマと首相・鳩山由紀夫との会談はたったの25分。30分の予定が5分短くなっている。超過した会談は多いが、短くなったケースはきわめて稀だ。通訳を入れるから、実質10分そこそこ。2月の麻生・オバマ会談が各国首脳に先駆けて約1時間20分、22日の米中首脳会談が1時間半を割いたのとくらべてみすぼらしいものとなった。米国が会談時間で暗に示唆しているメッセージは、民主党政権が「脱米入亜」ならそれで結構、当方も中国と遠慮なくやってゆく、という姿勢であろう。「米中蜜月・日本おいてけぼり」の構図が浮かび上がっている。アメリカの外交はドライで、早い。
会談内容を見れば、オバマ・鳩山が日米同盟の強化確認という、歴代首脳会談のとなえる「お経」の繰り返しにとどまったのに対して、国家主席・胡錦涛との会談は2国間関係は言うに及ばず、北朝鮮問題からイランの核問題に至るまで、すべての世界戦略を網羅している。7月の「米中戦略・経済対話」の盛り上がりに続き、まさにあれよあれよという間に米中の「G2」が成立してしまっているのである。オバマ政権が成立したときから指摘してきたとおり、対中外交の優先度はトップに位置づけられるようになった。まさに「米中蜜月時代」の到来だ。
これにたいして「鳩山外交」はどうか。首脳会談ではすべての重要懸案を先送りした。なぜなら鳩山自身の反米と見られた論文で、まずに「同盟は安保が基軸かどうか」という基本部分に疑いの目が向けられたからである。この確認なくして、日米関係の将来は律せられない。したがってインド洋での給油中止や、沖縄・普天間飛行場の移設問題、在日米軍基地再編の見直しなどキーポイントは、日米共に回避せざるを得なかったのである。鳩山は持論「対等な日米関係」にすら触れていない。しかし現実外交は既に厳しく展開している。焦点の「給油」について、英外相・ミリバンドは外相・岡田克也に対し「非常に重要であり、継続をお願いしたい」と要請した。なんで英国外相がと奇異に感じたが、米国側から手が回っていたに違いない。機微に渡る外交課題で英国が米国の代弁をする例は過去にも多い。また在日米軍基地再編問題について岡田が「民主党は賛成してこなかった問題もある」と言及したのに対し、クリントンは「現行計画の実現が基本で重要だ」とぴしゃりとはねつけた。野党時代の主張が国際外交でそのまま通ると思う方がどうかしている。
「外交デビュー成功」と民放テレビは華々しいが、総じて「鳩山外交」は甘い。胡錦涛との会談でも「友愛」を前面に押し出し、東シナ海のガス田開発問題に関して「いさかいの海から友愛の海にすべきだ」と述べたが、おそらく胡錦涛は面食らったに違いない。中国外交にとっても冷厳な交渉課題である同問題を、きわめて情緒的、文学的表現で持ち出したからである。胡錦涛は内心「今度の日本の首相は甘ちゃんだ。これを活用しよう」と思ったに違いない。「友愛」で外交が進むという判断が、指導者として甘い。国連演説でも鳩山は、日本がさまざまな外交課題で「架け橋」となると11回も繰り返したが、これも「友愛」同様に甘い。架け橋などなくても米中蜜月は進展している。国内合意なきCO2の25% 削減の国際公約化も、選挙圧勝でフリーパスを与えられたと勘違いしているとしか思えない。外交デビューは「危うさ」だけが目立った。
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