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2009-08-17 20:15
議論をすり替える官僚の目くらまし
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
官僚による独占的政策策定、あるいは政・官・財の癒着、さらにはお役所が政策策定を超えて、その実施にまで踏み込む、といった傾向に対して、いかにそれが国民の利益を損なっているか、また日本のためにならないか、と一貫して主張してきた。ただし、にわかに官僚の政策策定能力に代替すべき機関もヒトも見当たらないことから、当面は民間組織が力をつけると同時に、官僚の専横を許さない仕組みが必要だとも論じてきた。そして、今回選挙に際しては、濃淡の差こそあれ、各党共にこの路線上にあるかに見える。
ところが、ここへ来て「官僚たたきなどはやるべきではない。官僚とはうまく使うもので、敵対する存在ではない。あまり微に入り細にうがってアラ捜しをするのは、官僚のやる気を削ぐ」といった議論が何人かの人たちから、とみに聞こえるようになって来た。議論のすり替えというか、巧妙な目くらましの効果がある。官僚一般、まして特定官僚をリンチにかけたり、その存在や機能を否定しようとは、だれもしていない。人も無げな尊大さとしかいいようのない批判の無視、真摯に己の省庁の軌跡を再評価してみようという態度の欠如、はては既得権益の擁護から、政策の企画・策定段階からその実施・実行段階への版図拡大の意欲、といった制度の欠点を是正しよう、といっているだけのことだ。
そんなことをされて「やる気のなくなる」ような官僚であるのなら、もともと税金泥棒の域を出ないし、良い子いい子とおだてて使わなければ、それが敵対することになる、と言いたげな議論というのは、どこが本能寺か歴然としていよう。近代社会における官僚制の機能が必須であることは、それこそマックス・ウェーバー以来常識に属する。問題はそれが野放図になったり、上下揃って役人天国みたいな世界を作るのをチェックしよう、というだけの話だ。
総じて日本の官僚は、清潔で優秀だといって良い。しかし、明らかに自分たちに比較優位のない分野にまで影響力を求める、あるいは行使したがる傾向があるのも事実だ。その結果本来の国家百年の計の方がおろそかになって、場当たりでしのぎまくって、何百兆円の借金を作ったというのでは、お話しになるまい。行き過ぎを是正しようという風潮が出てきたのは大変良いことだ。妙な目くらましの屁理屈に誤摩化されてはなるまい。
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