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2009-07-18 12:19
不安定化する日本政治と民間シンクタンクの役割
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
衆議院の過半数は241だ。先の選挙では、小泉旋風が吹き荒れて300を超える議席を獲得した自民党だが、その前の選挙では(無所属から自民に復党した議員を含めて)240だった。大敗を喫して、驚天動地の自社さ(覚えていらっしゃる方がどれくらいいるだろう)政権が誕生したが、その時の選挙が223。選挙強さをしぶとく示して来た自民党ではあるが、このところの迷走ぶりに有権者が敏感に反応すれば、200の大台を割り込むこともあり得ない話ではない。かりにそうなって、減った議席を民主党が総取りして40から50議席を伸ばしたとしても、160議席。当たるも八卦、みたいな無責任な数合わせをしている訳ではない。
よほどの地滑りが起きない限り、民主党の過半数獲得は難しそうなのだ。現在の113議席を倍増させても過半数には届かないことを考えてみれば、一体日本の政治はどうなるのだろう、と心配の一つもしたくなろうというものではないか。もちろん民主党が過半数を獲得すれば、衆参両院を制して政局は安定しよう。それが望ましいかどうかは別にして、あり得ないシナリオではない。かりにそこまではゆかなくても、民主党が第一党の地位を占め、政策協定で連合政権を樹立するというのも、それに準じたケースだ。パートナーが単数か複数か、それがどの党だろうか、というのもなかなかの物語になる。しかし、第一党は依然として自民党という場合には、非自民の連合の複雑さはかなり増大する。
政権与党連合が衆議院で過半数を握れない、という状況も現実の可能性としては棄てきれまい。ということにでもなれば、是々非々で政策案件ごとに離合集散が発生することになる。政局不安定、度重なる総選挙、という方向に向かうのか、それとも麻生政権以上に口当たりの良い大盤振る舞いのバラマキで、その場を凌ぐことになるのか。どちらにしてもあまりぞっとしない構図で、それを回避する最低限の安全弁が用意されていなければ、納税者たるものたまったものではない。最低限の安全弁とは、これだけはいたしません、同じことだが、これだけは実行します、という具体的な政策マニフェストを選挙の前に各党が提示することだ。
甘ったるい美辞麗句のスローガンではない具体的政策メニューといってもよい。無原則な衆愚政治に陥らず、さらでだに危機的状況にある日本の財政、さらには経済のこれ以上の劣化を防ぐためには、それしかないように思う。タレントめいたキャラにすり寄ったり、いたずらに相手にローブローを繰り出しているより、遥かに生産性は高い筈だ。が、一向にそれらしき動きが見えないのは寒心にたえない。政党自身にその能力がないのだとしたら、民間の政策シンクタンクが、各党に踏み絵を踏んでもらう機会を作らねばなるまい。しかも、ことは急を要する。数ある日本の市民社会組織にとっては、またとない好機ではないか。
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