NEAT・EAF関連活動
NEAT第37回CCM
メモ
2023年3月31日
東アジア共同体評議会(CEAC)事務局
ASEAN+3(APT)首脳会議の傘下にある「東アジア研究所連合(NEAT)」の「国別代表者会議」(CCM)が、3月31日にNEAT中国主催により、下記1.~4.の要領でオンライン開催された。
- 1.日 時:2023年3月31日(金)9時30分より12時50分(日本時間)まで
- 2.開催方法:オンライン形式(Zoomウェビナー)
- 3.出席者:各国のNEAT代表者など32名。日本からは菊池誉名・東アジア共同体評議会事務局長等が参加した。
- 4.内容
2023年度のNEATの諸活動の報告などの他、今年度、NEAT日本、インドネシア、韓国、ラオスが主催する個別テーマによる作業部会(WG)の設置が提起された。各WGの内容については以下のとおりである。
(1)「東アジアにおける食料安全保障の強化に向けて」WG(NEAT日本主催)
2007-2008年の世界的な食料危機を契機に東アジアでは、食料安全保障に対する協力が進展し、2001年~2002年のAPT農林大臣会合(AMAF+3)でASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS)の設置が決定され、さらに2002年の同会合で東アジア緊急米備蓄(East Asia Emergency Rice Reserve : EAERR)パイロットプロジェクトの開始が承認され、2004年より実施された。こうした取り組みはその後発展を続け、EAERRは、2011年のAMAF+3の決定を受けて2012年より東アジア緊急米備蓄機構(APTERR)として設立された。そしてAPTERRは、2016年に国際機関として法人格を取得している。近年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大、農産物の国際価格の上昇、国際的な物流の遅れ、輸出規制などにより、国際社会においては、改めて食料安全保障の一層の強化が求められている。ただし東アジアにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響で緊急事態下にあるカンボジア、ラオス、ミャンマー及びフィリピンに対するAPTERRによるコメの拠出が実施され、またAFSISによるコメ等の作物の現状と需給見通しに関して、農作物将来展望報告書と早期警戒情報が公表されるなど、リスクに対して柔軟な対応がとられてきた。このように、東アジア地域においては、食料の安定供給や、貧困などの諸課題に対して、特にAPTERRやAFSISの枠組みを活用した食料安全保障分野の協力が展開されている。今後、東アジア地域がこれらの協力を進展させ、持続可能な発展をすることが出来れば、地域の繁栄のみならず、食料の安定供給や貧困における国際社会の課題解決にも大いに貢献することとなり、この分野の地域協力を進める意義は大きい。本WGでは、昨今の情勢を踏まえながら、特にAFSISの強化に焦点をあてつつ、東アジア地域の食料安全保障の強化に向けた政策提言をまとめていきたい。
(2)「APTの活性化に向けて」WG(NEATインドネシア主催)
APTは、東アジア共同体の構築を長期的なビジョンとして、東アジア諸国間の協力を促進するために1997年に設立され、政治、安全保障、経済、社会・文化などの分野で多くの協力枠組みを発展させてきた。しかしながらこの10年の間、政治的摩擦、経済競争、技術競争から環境破壊やパンデミックなどの多面的な危機により、東アジアの地域秩序はより脆弱で不安定になっている。APTは、東アジア13カ国における信頼できる協力手段を提供できていない。 東アジアの協力と連帯の精神が、地政学的、地経済学的な課題によって抑制されているのである。このような状況のなかで、APT13ヶ国は、今一度APTの価値を認識し、東アジア地域協力を活性化させる潜在的な分野を見出す必要ある。以上の問題意識のもと、本WGでは、APTの価値、特に東アジアの平和と繁栄のためのプロジェクトとしての機能やAPT諸国間の信頼関係の欠如を克服するための戦略について探る。また、APTの機能を活性化するための現実的かつ実質的な協力分野として、チェンマイ・イニシアティブのマルチ化を改善することによる金融、RCEPなどの経済、保健、水の安全保障、エネルギー転換、AOIPなどの分野についての政策提言をまとめていきたい。
(3)「APTの機能的協力と可視化の強化に向けて」WG(NEAT韓国主催)
過去20年の間、APTは東アジア地域協力の主軸の一つであり、同地域における機能的協力のための最も重要な手段であった。しかし、近年は、他の地域枠組みや拡大し続ける超大国の戦略的競争によって、その協力はますます影を潜めている。だが、COVID-19がもたらした医療危機により、東アジア諸国は地域的なパンデミックに対する備えや医療制度全般を東アジア全体で再検討する必要性が増してきた。さらに現在、貿易保護主義の傾向が強まり、各国の経済成長を脅かすだけでなく、地域や世界の経済秩序を危機にさらしている。これらの発展や脅威はすべて、東アジア地域諸国の協調的な協同を必要とする。東アジア地域諸国は、強固な機能的地域協力を再構築または再強化するための努力を倍増させなければならない。このような背景から、本WGでは、APTが直面している課題や危機を特定し、APTの機能的な協力を再強化する方法を議論し、APTの可視性を高めるための具体的な政策提言をまとめていきたい。
(4)「一帯一路構想:アジアの連結性強化を目的とするパートナーシップ」WG(NEAT ラオス主催)
一帯一路構想(Belt and Road Initiative)とは、中国が2013年に世界各国の政策、インフラ、貿易、金融、そして人と人のつながりを強化することを目的として進められている中国主導の構想である。2013年以来、中国は150ヶ国国以上、32の国際機関と協力し、一帯一路を進めている。一帯一路のプロジェクトには、将来的に中国-シンガポールまでを結ぶ鉄道の一部としてのラオス中国鉄道が存在する。2021年から運行が開始されたこのラオス中国鉄道とほかのインフラ整備プロジェクトにより、ラオスはアジア各国とつながりが深くなった。将来的な中国-シンガポール間の鉄道網の完成により、ASEAN諸国はじめ、世界各国との物理的な結びつきが強まることになり、ASEAN連結性マスタープランの実現に貢献する。しかしながら、こうしたBRIの親展に対して、消極的であったり反対するアジア諸国も存在している。反対の声として、BRIには透明性が欠け、参加国を債務の罠に落とし込む、との批判が主張されている。このような現状を踏まえて、このWGでは、BRIの実施に関する進歩状況や経験、教訓を共有し、BRIが将来より影響力があるものにするための提言を行うことを目指す。
以上
文責:事務局