NEAT・EAF関連活動

NEAT第35回CCM
メモ

2022年4月27日
東アジア共同体評議会(CEAC)事務局


ASEAN+3(APT)首脳会議の傘下にある「東アジア研究所連合(NEAT)」の「国別代表者会議」(CCM)が、4月27日にNEATラオス(ラオス外交問題研究所)主催により、下記1.~5.の要領でオンライン開催された。

  1. 1.日 時:2022年4月27日(水)10時30分より14時(日本時間)まで
  2. 2.開催方法:オンライン形式(Zoomウェビナー)
  3. 3.出席者:各国のNEAT代表者など35名。日本からは菊池誉名・東アジア共同体評議会事務局長等が参加した。
  4. 4.内容

2022年度のNEATの諸活動の報告などの他、今年度、NEAT日本、ラオス、ベトナム、中国、フィリピン、韓国が主催する個別テーマによる作業部会(WG)の設置が提起され、承認された。各WGの内容については以下のとおり。

会合のようす

(1)「東アジアにおけるカーボン・ニュートラルの達成に向けて」WG(NEAT日本主催)

昨年のCOP26では、各国削減目標(NDCs)が1.5℃目標の達成に向けて設定されていない場合、2022年末までにそれに見合った目標への再設定や戦略策定が招請された。こうしたNDCsの再設定を含めたカーボン・ニュートラル達成に向けた取り組みにおいて、東アジアにおいては各国の状況が様々であり、地域として一層の協力を行い協働していくべきであろう。そのため本WGでは、NDCsを含めた各国の長期戦略の内容や取り組みなどを共有し、かつ各国の戦略の内容を精緻化し、また地域としてどのような協力が可能なのかについて探る。また、国際社会の脱炭素化の鍵を握るのは、アジアのゼロエミッションであるところ、それに向けて、日本の技術開発や制度構築の成果・ノウハウをアジア全体で活用するための具体的な施策についても政策提言を行う。


(2)「パンデミック下の持続可能、包括的、回復力のある社会経済成長」WG(NEATラオス主催)

COVID-19は、世界経済に深刻な萎縮をもたらした。各国がウイルスの蔓延を抑えるために、各種施設の一時閉鎖、渡航禁止や制限などの措置を実施したためである。これらの対策により、地域や世界のサプライチェーン、また観光業が大きな混乱に陥った。さらにCOVID-19は、貧困の連鎖を何とか克服した何百万人もの人々を再び貧困に陥らせ、貧困問題をさらに複雑化させる可能性がある。そのため、本WGでは、渡航制限の緩和や旅行再開に関する各国の政策を共有し、今後APT諸国が持続可能、包括的、かつ強靭な社会経済を回復するための方策について政策提言を行う。


(3)「社会経済発展の新たな原動力となるデジタルトランスフォーメーション」WG(NEATベトナム主催)

途上国にとって、デジタル化は飛躍のチャンスであるが、すべての人に、公平にデジタル化へのアクセスと利益を生み出すためには、投資、能力開発を強化する必要がある。例えば、高収入の知的経済業務に従事する人はオンラインで業務を行っているが、低スキルの労働者はこの形態にアクセスすることができない。このようなアクセスの欠如により、世界的に財やサービスの提供がデジタル化しているなかで、低スキルの労働者が失業する機会が増大している。そこで、本WGでは、APT諸国の企業にとって、デジタル化の主な影響、機会、リスクは何か、デジタル変革から得られる利益を最大化するために、デジタル・インフラ、制度的枠組み、人材における能力不足とのギャップをどのようにして縮めることができるか、デジタルトランスフォーメーションの恩恵を公平かつ広く共有できるようにするためには何をすべきか、について議論を行い、具体的な政策提言を行う。


(4)「社会経済発展の新たな原動力となるデジタルトランスフォーメーション」WG(NEAT中国主催)

2015年に中国は「第三者市場協力(TPMC)」の概念を提唱した。TPMCはオープンかつ包括的な国際協力のアプローチであり、ビジネスパートナーが互いの強みを引き出し、第三国の産業発展、インフラ整備、生活水準の向上に協力し、1+1+1>3の効果を達成することができる。TPMCに関し、すでに多くの国同士でコンセンサスや覚書が締結されている。しかしながら、APT諸国の第三国市場協力はまだ十分とはいえない。第一に、この地域には、APT諸国を網羅するTPMCメカニズムが存在しない。ほとんどの覚書は二者間のみを対象とし、第三者の関与は限定的である。第二に、特にインフラ分野の資金ギャップが大きい。第三に、APT諸国間で国内のビジネス環境が大きく異なり、非効率な状況が発生している。これらの問題点を解決し、APTの第三者市場協力をさらに強化するために、本WGでは、第三国市場協力に関する知識と経験を共有し、地域貿易、FDI、金融に関連する分野の現状と今後の発展について共同研究を行い、APT諸国にマルチウィンの結果をもたらす第三国市場協力メカニズムの構築をどうすべきか、政策提言する。

(5)「COVID-19パンデミックから得られる戦略的コミュニケーション」WG(NEATフィリピン主催)

APT諸国において、早期にCOVID-19の感染率を下げることに成功している国々がある一方で、未だに深刻な状況の中にいる国もある。この違いには様々な理由があるが、一つには地域社会が政府やその他の機関から提供された情報をどのように受け取り、認識し、行動したかによってその結果が大きく異なったといえる。つまり、パンデミックの危機管理において、政府と社会において、明確で適切なコミュニケーションが成立しているかどうかが非常に重要であることが証明された。そのため本WGでは、COVID-19パンデミックにおいて、APT各国政府がとった戦略的コミュニケーションを評価・共有し、そのアップデートを試みる。さらに戦略的コミュニケーションに関する政府及び地域の課題を共有し、今後の危機時にAPT諸国において実施できる模範事例を提言する。

(6)「SDGsにおける東アジアの連携」WG(NEAT韓国主催)

SDGsの進展は、ASEAN共同体の設立を補完し、東アジア共同体を構築する上で不可欠な要素である。例えばSDGsに含まれている貧困、ジェンダー、環境、生物多様性、教育、労働、農村・都市開発、海洋問題などに対する目標が、ASEAN社会文化共同体(ASCC)の目標と一致していることからも明らかである。しかし、現状ではASCCは進捗しておらず、さらにCOVID-19パンデミックにより、SDGsに向けたASEANの進捗にもマイナスの影響を与えている。2020年の国連の報告書は、この地域のSDGsの進捗がすでに鈍化しており、2030年までに目標を達成するには程遠いことを例示した。実際にAPT加盟国の間では、SDGsに対する優先順位が高くない国も多い。そこで本WGでは、まずSDGsにおけるAPT諸国の現状を探り、東アジア共同体に向けてSDGsをどのように進めるのか、その共通政策を提言する。

以上
文責:事務局