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2009-03-07 10:35

(連載)東アジア共同体構築:注目される最近の動き(2)

石垣 泰司  東海大学法科大学院非常勤教授
 注目される第三の動きは、ASEAN諸国が域外国の東アジア・サミットへの参加の条件の1つとしてきた東南アジア友好協力条約(TAC)への加入の可能性を、オバマ政権が前向きに検討しつつあると伝えられることである。クリントン国務長官の2月16日から22日までの東アジア4カ国歴訪の目的は、特定の具体的懸案について協議することではなく、訪問国の政治・外交指導者から意見を聴取し、今後の米国の外交政策を練り上げるうえでの参考にすることであったとされる。日本、中国、韓国に加え、オバマ大統領が少年時代を過ごし、ASEAN事務局所在国でもあるインドネシアをとくに選んで訪問し、ASEAN事務局を訪問の上、スリン事務局長と会談し、米国のTAC加入に向け政府機関内の調整を始める意向まで明らかにしたことは、ブッシュ政権時代とは異なった米国の姿勢を示すものとして注目される。

 ただ、クリントン長官の上記4カ国での話し合いで、東アジア共同体の問題がとくに取り上げられたということはなかったようだ。日本訪問中の2月17日のインタビュー(船橋洋一・朝日主筆)では、「東南アジア地域に米国はどう関与すべきだと思うか」との問いに対し、「ASEANのような組織にかかわることは、米国のグローバルな戦略にとって重要な部分であり、米国が招かれる会合にはできる限り参加する考えだ」としつつも、「東アジア・サミットに参加するか」との問いに対しては、「その会合はよく知らないので、確認しないといけない。開催のタイミングが分からないし」と答えている。オバマ政権下のアジア太平洋地域担当国務次官補や日本部長等の人事も遅れているようであり、東アジア・サミット等への米国の関わりについて、本格的検討が行われ、その結果が明らかなるまでには、なお相当な時間を要するものと思われる。最近開催された第7回「日本・シンガポール・シンポジウム」(日本国際フォーラム主催)で、双方のパネリストが米国の東アジア・サミットへの参加の重要性を指摘する発言を行っていたのが印象的であった。

 次のASEAN+3首脳会議および東アジア・サミットは、ASEAN側提案に基づき4月10~12日にタイのプーケットで開催することで関係国間で調整中とされるが、これらサミットがASEAN首脳会議と別個に開催されるのは、初めてのことである。これは、今後、ASEAN+1、ASEAN+3および東アジア・サミットが、ASEAN首脳会議と切り離して別個に開催されることの先例を開くものとなり、域外諸国との対話の独立性が高まることとなろう。ASEAN側は、前記ASEAN首脳会議議長声明(第51項)の中で、現下の経済金融危機への対処のためこれらサミットへの「参加国の拡大」を検討したとし、ロシア、EU諸国、中東諸国の参加をも呼びかけることを決めたといわれるので、本年は、米国をはじめとする域外諸国の東アジア・サミットへの新規参加(その場合のステータス問題を含め)について新たな動きがみられる年となろう。(おわり)
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