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2009-03-02 19:05

アメリカを仰ぎ見ることの弊害

山下 英次  大阪市立大学大学院教授
 日本人は、明らかにアメリカを極端に過大評価している。多くの専門家、特に外交・安全保障の専門家は、アメリカの色眼鏡を通してしか世界を見ることができないため、世界の潮流変化が見えない。また、上下の関係を重視しすぎるため、ほとんどの日本人は、あたかもアメリカが自分の所属する集団の上司のように、常に下からアメリカを仰ぎ見ている。
 
 アメリカの価値観が概ね偏見がなく、ユニバーサルなものであるのなら良いのだが、現実は、それと大きくかけ離れている。米国の価値観は、西ヨーロッパや日本など他の成熟した民主主義国のそれとは異なり、かなり特異である。また、そもそも下から上を仰ぎ見たのでは、上で何が起こっているか分からないではないか。伝統的な日本画のように、アメリカを含めて常に世界を斜め上から俯瞰する視点が重要である。あるいは、宇宙船地球号に乗って、世界を鳥瞰するような視点が必要とされる。上から見れば、アメリカの問題点が良く分かる。
 
 今回の米国発グローバル危機を契機に、米国を一度徹底的に批判することが肝要である。何はともあれ、第1に米国批判、第2にさらに厳しい米国批判、第3になおも最大限に徹底した米国批判が必要である。さもないと、国際社会は、今次危機に対する適切な解決策を見出すことは決してできないであろう。
ベトナム戦争についてさえ、結局、ほとんど何も学ばなかった米国に真摯な反省を促すには、国際社会からの一致した、そして厳しい批判が不可欠である。この十数年の間、アメリカ最大の産業であった総合的な投資銀行業は、あっという間に事実上消滅した。製造業で最大の産業である自動車産業の現状もかくのごとしである。
 
 これまで長年にわたって無理に無理を重ねてきたアメリカ経済は、今後、急速な衰退過程を辿ることになろう。そして、軍事力は、当然のことながら、経済力のタイムラグ付き関数である。米国の軍事力が圧倒的であるという事態も、そう遠くないうちに消滅するであろう。われわれは、そうした時代を如何に生きるかというまさに時代の岐路に立っている。私としては、その答えは、日本がアジア統合に積極的に関与していくことである。いつまでも中国の台頭を日米同盟で抑止するというような姿勢では、日本は立ち行かなくなる。アジア地域統合に積極的に関与し、そうした中で近隣諸国からの信頼を勝ち得、外国に頼らない自国の防衛力を高めていくことが肝要ではないだろうか。
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