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2008-10-29 13:07

公益法人制度改革の「公益」に異議あり

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 米国が北朝鮮のテロ国家指定を取り消す、という。たしか「日本の拉致問題について一定の「進展」がなければ、テロ指定は取り消さない」とブッシュ大統領は約束した筈だ。どんな進展が見られたというのか、それをこそ麻生氏は聞いてみるべきだった。「前の首相に約束したと思うよ。お宅の首相は、あまりくるくる変わるから解らないよ」とはまさかいうまい。猫の眼の首相交代は、こんなところにも望ましからざる副産物を発生させているような気がする。一国の代表者に食言をさせて、それを咎めないのでは、それこそ鼎の軽重を問われよう。

 強力な切り札を喪ったとか、核拡散の前には拉致問題の影は薄いねとかと、顧みて他を謂う話が多いが、一つ忘れているのは、「北朝鮮拉致被害者、ましてその家族等というのは、特定の少数者の問題であって、国民が皆で心配したり、応援したりするような性格の問題ではない」という法律が成立し、この12月に実施に移されることだ。これを知ってか知らずでか、うやむやに通しておいて、米国の対応やヒルズの能天気な外交を責めてみても仕方がない。

 筆者の言っているのは、今回の公益法人制度改革のことである。その掲げる「公益」とは、何であるか。もっと具体的にいうと、「世のため、人のためになること」と「お身内、利益集団のみに関ること」の間に線引きを行ない、「公益」とは「不特定多数の人の利益に関らねばならぬ」という。つまり、北朝鮮拉致被害者やその家族は、不特定でもなければ、多数でもないので、そんなものは、たかだかお仲間、家族の関心事ではあっても、国民の関心事ではない、「公益」ではない、という話である。こんなべらぼうな法律を通しておいて、他人様のテロ国家指定解除に文句をつけられた義理ではないだろう。

 右手のしていることを、左手が知らないのは、複雑化した社会では起こりがちなことだ。国会で審議されている法律は、愚にもつかないものを含めて、何百とある。しかし、その中で、いくらお役人が「たいして国民生活に影響はありませんよ」と安請け合いをしようとも、断固国民の生活、感性に直接訴えかけるものについては声を上げなくてはならない。専門家といい、学識経験者と謂われる人にはそうした感性を持ち合わせていない人も多い。何でもイエスの御用学者さえ存在する。だから、あなた委せではことは進まない。

 北朝鮮拉致被害者とその家族の悲劇は、国民全体で受け止めるべきである。役人が勝手に「不特定・多数」の人の問題ではないと言うからといって、「公」のことではなく「公益」に関係ないと言うのは、国民の総意だとは思わない。今からでも遅くはない。公益法人制度改革の骨子になる「公益」概念はぶっつぶすべきだ。
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