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2008-10-12 17:56

(連載)ロシア、この「力治国家!」(2)

佐藤 守  元航空自衛官
 聞くと、このホテルは日本企業が「合弁?」で建てたホテルのようだが、今や所有権はロシア人の手に渡ってしまっているという。まるで中国の「ヤオハン」を思い出させるが、帰路小型のアントーノフ機で函館に向かう途中、後ろの席に座った紳士が、私の仲間の元教授と会話しているのが聞こえた。「どこに泊まられましたか?」「サハリン・サッポロホテルです」「そうですか、私はもっと大きなホテルを建てたのですが、見事に乗っ取られましてね。今回5回目の裁判があり、それで樺太に来たのですが、漸く勝ちました」「どういうことですか?」「サッポロホテルもそうですが、ホテルを建て、システムを整備し、従業員を教育し、準備万端整って、開業にこぎつけると、従業員の中に無断で休む者が出る。業務に差し支えるので厳しく注意するが、聞かないので解雇する。そうすると、彼らはすぐに裁判に訴えるのです」

 なおも、耳を傾けていると、「日本でもそんな訴訟が増えましたね」「そうですが、この国の裁判は、一方的に経営者が悪いことにされ、その結果莫大な訴訟費用はもとより、結局追い出されることになって、建物自体が乗っ取られるのです」「サボった従業員のほうが、裁かれるべきでしょう?」「それは日本の考え。彼らは日本から合弁企業を奪うことが目的なのですから、最初から計画的なのです」「それじゃ、国家ぐるみの詐欺じゃないですか?」「その通りなのですが、一応裁判の形式を取っていますから、クレームを付けにくい。4回まで戦いましたが、負けて全部取られました。そこでどうにも気持ちが治まらないので、たまたま経済使節団がモスクワに行き、プーチンに会うと聞いたので、代表団の中の友人にプーチンへの直訴状を預けたのです」

 「届きましたか?」「勿論。彼はVIPでしたから・・・。そこで早速プーチンから指示が出たらしく、5回目の裁判が開かれるというので、樺太に呼び出されたのです」「結果はどうでした?」「今度は、結審していたはずの裁判ですが、勝ちました。権力者の指示の威力でしょう」「それはよかった。しかし、そんなデタラメな裁判は、日本では考えられませんね」「そこで、早速取り返せるものだけでも取り返そうと、手立てをうって来ました。力が支配する国との商売は、よほど気をつけないと、むしりとられるのが関の山です」「日本人は全くお人よしですからね」「政府もメディアも、そんな事実は伝えませんからね。現実は酷いものです」

 当時、サハリン北方で開発されていた石油・天然ガス田にも、日本側は相当な出資をしていたようだが、完成したとたんに、この実業家が体験したと同様な手口に引っかかった。報道された「サハリン2」プロジェクトである。国や大手商社までもが、どうして易々とロシアの詐欺に引っかかるのだろう?と思ったものだが、たまたまロシアからの出稼ぎ力士の非常識な記者会見を見て、「またあの手を使っているのだ!」と思い出したのである。今度は日本の国内法が適用される筈だから、まさか彼らが勝訴することはないと思うが、今や法曹界までもロシア方式に手馴れた“国際派弁護士”の方々が支配しているかもしれないから、油断はできない・・・(つづく)
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