国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-09-27 13:48

市場万能主義の崩壊と日本の進路

山下英次  EUI・ロベール・シューマン高等研究所 客員フェロー
 いまアメリカ金融市場で進行している事態は、市場万能主義(Free Market Capitalism)の見事な崩壊である。換言すれば、アングロ・サクソン型資本主義の崩壊である。私は、資本主義は、本来、自由市場と政府の役割の適切な混合であるべきと考えるが、実際、米国の金融市場は自由市場と縁故主義(crony capitalism)の混合である。これは非常に悪い組み合わせであり、純粋な自由市場よりも遥かに性質が悪かった。

 米国金融市場の崩壊は、私の予想をも遥かに超えるものとなったが、いずれにせよ、ただ単にウォール・ストリートだけの問題にとどまらないであろう。当然、メイン・ストリートにも大きな影響を及ぼす。また、実体経済への影響は、ただ単に一時的なリセッションに陥るかどうかなどといった生易しいものではなく、すでに私が『国際金融』(外国為替貿易研究会)6月1日号の巻頭論文「アメリカの住宅バブル崩壊が意味するもの」で指摘したように、これは、米国経済の非常に長期にわたる衰退過程の始まりになるであろう。しかも、衰退のスピードはかなり速いものとなろう。なぜなら、米国経済は、全体として、長年にわたり無理に無理を重ねてきたからである。

 私は、近年の米国の政策は、外交・安全保障政策、経済政策ともにひどくピントはずれで間違っており、いずれ、外交・安全保障政策、経済政策ともに破綻すると明言してきたが、手前味噌で恐縮だが、実際そのとおりになってきたのではないかと理解している。経済の衰退は、無論、間違いなくいずれ軍事力に対しても大きなマイナス要因として作用してくる。ある程度のタイムラグはあるだろうが、それほど長いタイムラグとはならないであろう。すなわち、米国の圧倒的な軍事力の優位性ということも、早晩なくなるということである。われわれはいずれ、そうしたポラリゼーション(多極化)の時代を生きることになる。

 いつまでも、米国の古いそして特異かつ反国際的な世界観に取りつかれたまま、中国を牽制することばかりしか頭が回らないようでは、国益を大きく損ねることになる。アジア地域統合に対する日本の関与の意味を、いつまでも対中国牽制であるといった受動的な立場では、国を誤ることになるであろう。中国とともにアジア地域統合を堂々と推進していくという立場に立つべきである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会