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2008-09-11 16:39

注目される中国主導の北部湾(トンキン湾)経済協力構想

細川大輔  大阪経済大学教授
 「第3回汎北部湾経済協力フォーラム」がこの7月、中国広西チワン族自治区の北海市で開催された。北部湾とは、ベトナムと国境を接する中国南西部の海岸地域のことで、トンキン湾ともいう。中国はこの地域を舞台に、ASEAN6カ国(ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)との経済協力関係を推進しようとしている。すなわち、汎北部湾経済協力とは、大メコン圏経済協力に次ぐ中国がASEANと進める新しいサブ地域協力の一つである。

 2006年頃から中国は汎北部湾経済協力構想を打ち出した。この地域の海上輸送における強みを生かし、同地域の資源を共同開発することによって、各国の経済発展に寄与しようとしてきた。また、関係国が領有権を争っている南沙諸島問題を一時棚上げし、資源を共同開発することによって、中国とASEANにウィン=ウィンの関係を築こうとするねらいもあった。2008年1月、中国政府は当該協力の核となる広西北部湾地域を、長江デルタ、珠江デルタ、渤海湾につぐ中国4番目の経済開発区として承認している。
 
 筆者は9月上旬、南寧市の北部湾開発委員会を訪問する機会があった。委員会幹部の話によると、今年のフォーラムでは各国専門家会議が開催され、投資や貿易における規則や技術的スタンダードの統一、知的支援などについて議論され、また将来的には汎北部湾経済協力の常設事務局設立や同協力体の機関化の話題も出た。日本がASEAN諸国と推進する経済連携構想やERIA構想を彷彿とさせる話である。さらには、「文化面の協力・統合」にまで言及があったとのことである。

 この構想は、中国の単なる南沙諸島問題への対策ではなく、日本の対ASEAN外交を意識しつつ、あまり注目されていない北部湾地域で、中国が中国主導の共同体づくりを試みようとしているものと見るべきであろう。
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