国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-08-12 07:12

国際アジア共同体学会・バンコク・シンポジュウム報告

林 亮  国際アジア共同体学会事務次長・創価大学教授
 国際アジア共同体学会(代表:進藤榮一筑波大学名誉教授)は、東アジア共同体構築を目指して2006年12月に創設された若い学会ですが、ほぼ2ヶ月に1度の研究会に加え、03年3月ソウル、07年7月北京、本年7月バンコクと3年連続で国際シンポジュウムを開催するなど、精力的な活動を続けています。今回のバンコク・シンポジウムでは、日本、中国、韓国、タイの研究者が報告を行うと同時に、駐タイ大使小林秀明氏をはじめとする多数の現地の経済人、大学関係者の参加を頂き、充実した会となりました。私も、その第Ⅲセッション「アセアン外交における北東アジアの役割」において「アジアに集中する自然災害と東アジア共通の非伝統的安全保障政策」について報告させて頂きました。以下、その報告の概略を4点に整理して、報告させていただきます。
 
 1.東アジアの伝統的安全保障は、北朝鮮の核問題をのぞけば、基本的に安定している。中国の軍拡は、アメリカのグローバルな軍事力増強による中国の抑止力の減退を補う形で進められており、基本的には防衛的性格が支配的である。一方で、地域各国は航空母艦、強襲揚陸艦、防空駆逐艦、高性能ジェット機など質的軍拡を進めており、将来的には途上国と先進国の亀裂を深めて、情勢の不安定化が懸念される(米軍のRMAや仏サルコジ政権の軍事改革に見られる海外プレゼンス強化戦略と同様の方向性を目指していると思われる)。

 2.長期拡大傾向にある自然災害の被害がアジアに集中し、災害をきっかけとした貧困拡大が地域安全保障にとって重大な脅威になりつつある。このような非伝統的安全保障上の脅威が、従来の伝統的安全保障に比較して重要性を増しつつある。

 3.東アジアに拡散しつつある長距離輸送機、強襲揚陸艦などは、大規模自然災害、人為的災害に対する緊急の救助・支援に有効な装備であり、同時にこれらを「東アジア共同の救助・支援機構」が統括して運用することで、地域各国の信頼性醸成や(テロの温床ともなる災害をきっかけとした)貧困を防止することが可能となる。

 4.「東アジア緊急救助・支援機構」と、各国の強襲揚陸艦などを中心に組織される常設の「緊急援助・支援隊」は、来たるべき東アジア共同体の欠くべからざる要素となる。同地域に利害関係を有する各国が、「攻撃的兵器」を平和目的に供出しあうことで、相互の信頼性醸成を進展させ、同時に大国が東アジアに「平和的なプレゼンス」を発揮する重要な手段となると思われる。

 今回の私の報告に対しては、日本人研究者だけでなく、タイ外務省アセアン局長やタイ『ザ・ネーション』紙記者をはじめとする多くの方々から関心を示されると同時に、多くの質問を頂きました。報告の欠点、弱点について、今後も研究を進め、東アジア共同体実現の設計図の中に「東アジア緊急救助・支援機構」を組み込むべく、研究を続けたいと決意しました。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会