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2008-07-29 16:12

一身独立して、一国独立する

山下英次  EUI・ロベール・シューマン高等研究所 客員フェロー
 首題の言葉は、福澤諭吉の『学問のすすめ』三編に出てくる言葉である。すなわち、国民一人一人が独立心を持たなければ、れっきとした独立国にはなれない、という意味である。諭吉の生涯を通じての最大の問題意識は、日本を如何にれっきとした独立国にするかということであった。国を強化するためには、当時進んだ欧米から知識や技術を輸入し、それを日本の文化に合ったように自家薬籠中のものとしなければならなかった。

 伊藤憲一氏の7月18日付け産経新聞『正論』欄への寄稿「米国への〈依存心〉を払拭せよ」に対する7月25~26日付け本欄の佐藤守氏のコメント、同月27~28日付けの本欄の茂田宏氏の「圧力に屈して外交は成り立たない」を読んで改めて実感するのは、いま我が国に必要なのは、国家としての真の意味での独立ということではないか、ということである。およそ、現在の我が国にとっての災厄は、ほとんどすべて、国としての独立性の低さから来ている、と言っても過言ではないのではないだろうか。

 すでにれっきとした独立国であるなどと振る舞うことは、もうやめにしよう。いま、我が国とって最も必要なのは、ある種の独立運動である。国内に夥しい数の外国の軍事基地が存在することを異常と思わなければならない。それが世界の常識である。日本の独立性を高めなければならないという点については、おそらく3氏も共通の認識を持っておられると想像する。また、おそらく3氏に共通しているのは、日米同盟の堅持を前提としていることである。しかし、私が考えるには、日米同盟をあくまでも前提としていたのでは、日本の真の意味での独立はありえない。日本は、本来、アメリカからも、中国からも、ロシアからも、他のいかなる国からも、独立した存在でなければならない。

 「平和国家」日本にアメリカが辟易しているというが、現在の国際政治を大きくとらえるとすれば、いま国際社会が辟易している最大の対象は、アメリカの近年の失敗続きの政策であることを忘れてはならない。バラック・オバマ米大統領候補が先週ベルリンに来て演説を行ったが、それに10万人もの聴衆が集まったということは、欧州人の近年の米国に対する非常に深い失望と辟易を抜きにしては考えられない。米国の共和党員が、イラク政策に関してブッシュとほとんど変わらないジョン・マケインを大統領候補にしたことについても、辟易しているのである。日本人は、自国を自分たちで守るという当たり前のことを決断しなければならない。そして、欧州統合に身を投じることを通じて近隣諸国の信頼を勝ち得、米国からの独立を果たしたドイツから、多くを学ぶべきである。アジア統合の推進の日本にとっての意味は、そこにもあるのである。
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