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2008-06-18 11:35

パリの回転寿司屋に思う

細川大輔  大阪経済大学教授
 6月上旬、フランスへ行く機会があった。筆者にとってはほぼ20年ぶりの訪問である。まず驚いたのが、ユーロ高による円換算での物価の高さである。ホテルの宿泊料は、二つ星クラスでも出張規定金額の2倍は覚悟せねばならない。安宿の朝食も15ユーロ(約2700円)なので怖じ気づいてしまい、かつて通った一流レストランには足が向かなかった。次に印象的だったのは、フランス人がよく英語を話すことである。若いフランス人たちの間に筆者が入ると、フランス人同士がきれいな英語で話し合っている。隔世の感があった。

 最後にショックだったのが、パリ16区の高級住宅街パッシー通りで、回転寿司屋を見つけたことである。エッフェル塔がパチンコ屋のネオンのような照明だったこと以上に、これには驚いた。店内はフランスらしい内装ではあったが、器材はまぎれもなく日本でお目にかかるあの回転機械である。客席もコンベアーに向き合う席と、コンベアーと垂直に座るグループ席があるのも、日本と同様だ。異様だったのは、自動巻き寿司器なるものが設置されていたこと。店員がご飯を器械のドラムに入れると、海苔の大きさに薄く延ばされた状態で鉄板に押し出されてくる。その上に海苔を載せ、ひっくり返してネタを盛り、スイッチを押すと下に吸い込まれ、元に戻ってきたときには、巻き寿司が出来上がっている。筆者としては、保守的なパリ16区でこんな醜悪な機械をレストランに持ち込むハズはない、と考えていたのである。

 味は期待していなかったせいもあるが、上々であった。ただ、ネタはサーモンが中心で種類が少ない。またサラダやてんぷら、デザートも同時に流れており、にぎり寿司の比率はせいぜい3割で、日本人からみると、寿司屋とはいい難い。客は場所柄フランス人ばかりで、日本人客を想定した出店ではない。ということは、おたく文化と同様、寿司文化もフランスに浸透しているのである。値段は、決して日本のように安くないので、ファーストフードの感覚ではない。コンベアーで料理が運ばれ、客は好みの皿だけを取ることができるスタイルと合理性が受けているのだろうか。

 現代日本文化は、世界で思いがけない評価を得ているようだ。先日のアンケート調査で海外での日本のイメージが良好なのは、こうしたソフトな文化力による面もあるのではないか。われわれ日本人は、もっと自国の現代文化に自信を持っていいのだろう。
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