国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-06-13 17:49

オーストラリアと東アジア共同体の関係を考える

成田弘成  桜花学園大学教授
 オーストラリアの新首相ケビン・ラッド氏が、6月8日から日本を訪問中だが、日本での評判はどのようなものだろうか。彼は、マンネリ化したハワード前首相から昨年11月政権を勝ち取った後、京都議定書への批准、難民政策パシフィック・ソリューションの破棄、先住民への歴史的謝罪、南太平洋地域及びアジアへの外遊による地域的関係の改善等々と、鮮やかな政治的手腕を披露している。やや後回しになった日本への訪問を、彼は「アジア太平洋共同体」の提案というお土産を持って乗り込んできたのである。私としては、ちょうど彼が新首相となった前後から何度かオーストラリアを訪れる機会を持ったので、オーストラリアと東アジア共同体との関係を考えてみたいと思っていた。

 日本とオーストラリアは、東アジア共同体論をきっかけに、どのような形で真の文化的なパートナーとなりえるのだろうか。まずこのパートナーシップ構築には、2つの試金石があるように思える。1つは、新たな環境型マルチ・ファンクション・ポリス(MFP)の提案をしたい。周知のように、1990年代に両国の技術・文化交流を目指したMFP構想があり、ある意味、文化摩擦の為に頓挫したことは記憶に新しい。環境問題に悩むオーストラリアを、今こそ日本の技術革新が救い、文化交流の為の場を創造すべきであろう。オーストラリア新首相は、日本車だけではなく、日本の人々と一緒にやっていくための、もっと直接的な企画を提案すべきではないだろうか。
 
 2つ目は、共和制移行の問題である。これはオーストラリア国民の決定すべき事柄であるが、同国がアジアの一員を目指す時には、最も考え直さねばならない問題だろう。既にオーストラリアがアジア経済の中で重要な役割を果たしていることに異論を持つ者はいない。しかし、アイデンティティの面で、同国がアジアとの結びつきを深める時期は、一体いつからになるのだろうか。同国におけるアジア移民論争は、たとえハワード前首相の退陣でも続くことになるだろうから。
 
 東アジア共同体論は、少なくとも、経済的な結びつきだけではなく、アジア的価値観の共有までも議論している構想である。あえて文化の側面から、日本とオーストラリアの関係の再構築への道を考えてみる必要があるだろう。ラッド首相の新提案「アジア太平洋共同体」構想は、外交戦略的で、かつ多地域間の包括的な内容を含むものなので、改めて考察してみたい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会