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2008-05-02 21:02

福田総理のオリンピック開会式への出席表明に思う

鈴木馨祐  衆議院議員
 昨日(5月1日)あたりから福田総理が北京オリンピックの開会式出席に前向きな姿勢を見せているようだ。チベット問題、東シナ海ガス田問題、農薬ギョーザ問題、越境公害問題、軍備拡張問題、国連安保理常任理事国入り問題、中国側の姿勢ゆえに、何一つとして解決の糸口すら見えていない、今の段階で、中国が最も欲しがっている「オリンピック開会式への主要国首脳の出席」に言及した背景には、一体どのような戦略的な判断があったのだろうか。これらの諸問題についての今後の中国の態度の変化を見守りたい。

 もしも何らの変化もないとすれば、今回の決断は明らかな戦略ミスであり、福田総理はその責任を問われて然るべきだろう。国益がかかった首脳同士の関係は、友人同士の関係ではないのだから、単なる「友好」というものは存在し得ない。特に、価値観も異なり、敵対的な行動を見せることの多い国を相手にする場合は、そうだろう。外交がご専門だった総理である、そこのところは当然承知した上で、戦略的に深謀遠慮があっての、今回の決断なのだろう。

 とはいえ、一般論から言えば、交渉相手に対しては、選択の幅を最大限に拡げ、かつどの選択をするかは最後まで明らかにしないというのが、自らの国益を最大化できる根本原則である。まさかとは思うが、間違っても日本側が、人権軽視という大きな国際政治上のリスクを負っての総理のオリンピック開会式出席やら支援パッケージやらを提供した見返りが、パンダだけという結果とならないよう、厳しく見守っていきたい。なにせ、前回の福田総理訪中時には、日本側のさまざまな協力などの見返りが、トキ2羽のみという「外交交渉」をまとめてきた総理大臣である。今回は、その過ちを繰り返すことがないよう祈りたいものだ。

 中国に対して断行するこうした「大胆な決断」を、自民党内の古い政治勢力や利権政治に対してもすれば、支持率もここまでは低下しまい。私が麻生氏を担いだ前回の総裁選で、それ以上の支持を受けた総理である。自民党の国会議員の多くが支持したということは、素晴らしい決断力とビジョンを持っていると、多くの人が思ったからなのだろう。そうでなければ一国の総理が決まる総裁選挙で、あれほど多くの政治家が福田氏を支持したはずがないではないか。国際競争も厳しくなる中で、わが日本の10年後、20年後をにらんで、どのような外交ビジョン、経済ビジョンを福田総理大臣というわが国のトップリーダーが示すのか、期待しながら見守りたいものだ。国会における与野党の論戦も、本来は足の引っ張り合いでなく、そのような建設的なものであるべきなのではないだろうか。
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