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2008-04-19 21:09

日本は科学技術による環境・農業立国を目指せ

高杉 宏平  技術開発研究
 1970-80年代に世界の頂点を極めた日本のものづくりは、90年代のバブル崩壊と共に漂流を始めた。世界に類をみない成功を支えていたのは、組み立てメーカーを頂点とする系列や終身雇用・年功序列などの日本独自のシステムであったが、バブル崩壊の末にそれらを放棄した結果、日本は技術力の空洞化を招いた。現在の日本のものづくりは、未だその進路を見出せず漂流中というのが実態であろう。

 世界各地の市場で「最高級品」の代名詞にまで昇華させた "Made in Japan"のブランド製品を築きあげてきたのは、日本の技術者であったが、かれらのプライドを失墜させ、アイデンティティ・クラッシュを引き起こしたのは、バブルの崩壊であった。企業側は、アメリカ型の株主・株価優先の波にあおられ、利益率優先の選択をした結果、第一線の技術者を大量にリストラした。その結果、技術者の企業への帰属意識が希薄になった。そして、それまで第一線で日本企業の発展を支えてきた多くの技術者が、韓国・中国などの企業へ流れていった。90年代の韓国の急進や現在の中国の技術発展の基礎になっているのは、彼ら日本人技術者が影にいたことを忘れてはなるまい。

 では、今後日本技術の進むべき道はどこにあるのか。急速に経済力を伸ばすと同時に、一般技術に関してはほぼ日本と同水準まで高めてきている、といわれる中国・インドなど新興国との生産高、市場獲得競争に巻き込まれるのは得策ではあるまい。日本は、大量生産技術を要する分野は彼ら新興国に積極的に技術指導を行い、薄利多売製品生産と市場は彼らに譲ったらよい。そうすることで、友好関係の発展にも寄与できるし、場合によっては、日本人が実は心底求めている「尊敬」さえされることになるかもしれない。

 他方で、日本は、特殊技術や先端技術を要求される分野に力を集中し、かつて日本が誇り、そして個人的には日本人が最も得意とする分野だと思う、高水準・高付加価値産業に注力し、発展させたらよい。具体的には、環境技術と農業生産技術の開発・実用化である。「環境立国」を名実ともに証明するためにも、地球環境の健全化に貢献するためにも、環境技術はいまや必要不可欠である。そして間違いなく経済成長分野でもある。農業技術改革の必要性は言うまでもない。現在食料自給率40%、穀物自給率27%という極めて異常な状況を改善し、将来の国民の食を確保するためにも、農業生産技術の発展は国策として取り組むべき重要課題であろう。
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