国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-04-09 08:47

(連載)持続可能なアジアのための環境人材育成(6)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 周知のように、今年7月に開催される洞爺湖サミットでは、G8の首脳たちが、世界経済情勢、アフリカ開発の諸問題、感染症対策等と並んで、気候変動問題を討議し、何らかの合意文書を発表する予定である。気候変動問題は、一つには温暖化の防止であるが、もう一つは気候変動への適応である。先進諸国の関心が主として前者であるのに対して、途上国の関心は後者が大きい。そのことは、既にナイロビでのCOP12(国連気候変動枠組条約国会議第12回会合)、バリ島でのCOP13(同第13回会合)の討議で明白である。地球的規模の気候変動がもたらす生態的、経済的、社会的、政治的影響は多大である。その主要な影響には、以下のことが予想されている。

*中緯度・半乾燥低緯度地域での旱魃の増加:数億人が水不足に直面する可能性大
*低緯度地域における穀物生産性の低下
*森林火災リスクの増大
*洪水と暴風雨による人的・物的被害の増大
*海洋の深層循環の弱化による生態系の変化
*広範囲に及ぶ沿岸湿地の消失、氷河・積雪の融解と海面水位の上昇による小規模島嶼国の一部水没
*熱波、洪水、旱魃による罹病率と死亡者の増加
*感染症媒介生物の分布変化による風土病の広がり
*種の絶滅リスクの増大(珊瑚の白化・死滅等)

 京都議定書の下で、日本が1990年比で6%の温室効果ガス(GHG)削減義務を負っているのは、地球温暖化の防止に大きな責任をもっているというだけでなく、途上国の適応に大きな貢献ができる国であるからである。さらに、二酸化炭素排出の絶対量ではなくて、他の削減義務先進諸国と同様に、一人当たりの二酸化炭素排出量が大きいという理由からである。しかし世界全体の二酸化炭素排出量の削減が、今後の地球温暖化対策に不可欠であることを考えると、京都議定書後の2013年以降は、中国、インド等絶対量で二酸化炭素排出量が大きい途上国も、ベルリン・マンデートの下での「共通だが、差異ある責任」原則に従って、何らかの形で削減義務を負うことが当然であろう。

 これが昨年12月のバリで開催されたCOP13での合意であり、この国際的合意に従って2013年以降の新しい国際的枠組みへの模索が、今年のG8洞爺湖サミットの場で中国、インド、ブラジル等二酸化炭素排出主要途上国を含めて、始まることになっている。2008年の日本は、G8議長国であり、今年ポーランドで開催予定のCOP14までに少なくともG8諸国間での合意を形成し、来年デンマークでのCOP15において新しい国際的枠組みを設定できるよう、指導力を発揮すべき立場にいるといってよい。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会