国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-02-05 17:30

東アジアに「食の安全」のための機関を

安江則子  立命館大学教授
 日本では世界中の食品を楽しむことが出来る。特に近年アジアン・フードの人気は高い。その一方で輸入食品の安全性には不安もある。この点で、農産品を含む域内自由市場化を行ったEUの「農村から食卓まで」をカバーした食の安全システムに学ぶところは大きい。

 EUは1960年代から共通農業政策を実施し、域内市場も自由化されたが、農産品の安全性について認識が高まったのは90年代後半であった。EUでは、96年にBSEの人への感染が発覚、さらに99年にベルギーでダイオキシンに汚染された鶏肉問題が発生し、食品や家畜の食糧の安全性の確保が緊急の課題となった。2002年には食糧安全規則を採択し、加盟国や企業に対する義務を明示するとともに、欧州食糧安全庁(EFSA)の設置を決めた。

 EFSAは、食の安全リスクに関して、リスク評価とリスク・コミュニケーションを行う機関である。具体的には、政策決定者に対し速やかに最高水準の科学者集団が助言を行い、その情報を市民にも公表する。EUのように農産品や食料品の自由化が実施されている場合、ある食品の安全性が危ぶまれても、その流通を禁止することは難しい決断であった。そのため国益に中立的な科学的助言をする機関が必要とされたのである。食品の安全性に疑いがある場合、行政の判断とは別に、消費者はメディアに翻弄されない客観的情報を得て、その品を購入するかどうかを自ら判断できることが重要である。また、EFSAのいう食の安全とは、次世代への影響も考慮した広い概念であるところも新しかった。

 日本もBSE問題では、EUの食糧安全規則から多くを学び、食品の原材料のトレーサビリティを重視するようになった。EFSAは、EU域内だけでなく全世界に分析結果を情報発信することで重要な役割を果たしている。鳥インフルエンザなどで日本は東アジアの国々に支援を行ってきたが、東アジア地域で将来的に農産品や食糧の自由化を一層進めていくのであれば、EFSAをモデルに、より包括的な食の安全のための機関の設置に向けてイニシアティブをとってほしい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会