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2007-12-10 10:26

連載投稿(4)途上国貧困層の期待する環境問題解決への道筋

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 途上国の貧困層が直面している環境問題の基本的解決策は、特にアフリカ、アジアの低所得国にみるように、人口増の抑制、貧困の削減・撲滅にあり、そして政府による農林水産対策、工業化対策、都市対策等における環境保全視点の導入・強化、効果的な環境対策や市民・企業・官僚を含めたあらゆるレベルでの環境教育の充実にある。さらに、これらの環境政策が効果的に形成・実行されるためには、途上国政府の政策形成・実施能力を強化し、情報公開・透明性を確保し、地方分権を推進し、女性の地位向上政策を導入・強化する必要がある。さらに、政治家・官僚の腐敗撲滅、市民社会の政策決定・実施・監視・評価過程への参画が不可欠である。これら低所得国における地球温暖化対策については、現実的には「適応」対策と先進国と途上国との間の排出権の国際的取引を認めたCDM対策を除いては、温室効果ガスを大量に排出している先進国と先発途上国での対策の強化に期待せざるを得ないであろう。

 かくして、これら低所得国の貧困層が抱く国際社会への期待の中心は、先進諸国やその他の温室効果ガスの大量排出国がその義務的ないし自主的削減目標を達成することにあり、さらにこれらの国々に本社を置く多国籍企業を含めた民間企業がその貿易・投資活動において環境保全の視点を導入・強化することである。先進国に限らず中国等あらゆる政府開発援助(ODA)供与国がそのODAで貧困削減・撲滅を優先し、環境保全視点を強化することにある。さらに、アジア・アフリカの最貧国では、ODAにおける贈与の増大、重債務国を含めた貧困国の累積債務の帳消し、情報公開・透明性の一層の確保、市民社会の能力強化とNGOを通じたODAの増大が叫ばれている。

 以上の期待に配慮しない限り、民間部門による貿易・投資等経済活動の増大やODAの増大は、これら途上国の環境問題を悪化こそすれ、緩和・解決にはならない。特に途上国の最貧層が直面している環境問題を解決するためには、国際的な環境基準に合致した国際貿易・投資活動の推進と環境保全を主流化したODAの供与はもちろんのこと、貧困層を対象としたSustainable Livelihoodの増進に直結したODAが不可欠である。それが、ケニヤ、インドネシア、シンガポール、インド、マレーシアと日本での国際会議に参加した筆者の基本的認識である。(つづく)
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