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2007-11-10 21:44

台湾をめぐる国際情勢と選挙

舛島貞  大学准教授
 台湾の選挙シーズンがまもなく到来する。今年は、国際連合加盟をめぐる「公投」を材料にしながら、中華民国と台湾をめぐるシンボルの争いがおきそうである。「中華民国」が(いろいろな意味で)百周年を迎えられるのかどうかという正念場でもある。国際的な環境も変化した。アメリカも現在は(TRAに代表される基本姿勢は維持しつつも)以前ほど台湾支持を明確にはせず、国務省はじめ、アメリカのブッシュ大統領も陳水扁総統に対して不快感をもっているという。

 その主な原因は、その中国政策にある。陳水扁総統が台湾海峡を不安定にさせるような火遊びをしているというのが、アメリカの観点である。また、2008年の北京オリンピックから2010年の上海万博までの間は、中国が国際社会の目線を強く意識するので、台湾が独立するならこの時期を逃してはいけない、という言論がかつてあったが、日本国内においては昨今あまり見られなくなった。10月上旬の中国共産党大会では、国務院台湾弁公室の関係者が党中央のトップレベルに入らず、また曾慶紅引退後の台湾問題に関する業務継承者がわからず、台湾問題そのものが低下したとさえ見る向きもあった。

 対米関係を良好に保っている中国にとっては、「台湾問題」はもはやコントロール可能なものに見えているのだろう。では台湾ではどうか。台湾のメディアでも、中国の姿勢の変容はアメリカの対台政策の動揺を伝えるところもあり、以前ほど来年からの三年を独立の好機と見る議論は見られない。言論の空間では、台湾をめぐる情勢は比較的穏当な方向に向かっているようにも見える。まもなく来日する国民党の馬英九候補も、民進党の謝長廷候補も、中国との交流については現政権よりは穏当な路線を採用するだろう。

 しかし、台湾における選挙をめぐる言論や行為はかなり過激だ。国際連合において、台湾の加盟をめぐる審議について事務総長とは異なるスタンスを取ったことを台湾では高く評価する向きもある。これから立法院委員選挙、大総統選挙が控えている。そして来年の五月以後には、打たれ強い指導者である陳水扁が在野の人となる。選挙の結果は当日まで読めないが、それでもこの限定的な国際情勢の下で、「何か」を提案することは確かであろう。台湾もまた東アジアのガバナンス形成に参与できる可能性を開かないと、選挙のたびにさまざまな危険が懸念され、多くのコストがかかるし、不安が増す。何かしらの形で台湾を「東アジア」に組み込むことが、東アジア地域の安定につながるものと考えるが、どうであろうか。
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