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2025-07-29 11:15

(連載1)日本の社会におけるスパイ

岡本 裕明 海外事業経営者
 21歳の時だったと思いますが、東京からアエロフロートでモスクワのシェレメーチェボ国際空港で乗り換えて東ベルリン空港に向かった際、厳冬のモスクワの空港が見えてきて、持っていたカメラで何枚か写真を撮りました。それが禁止行為だと私は知っていました。知っていたからこそ、キャビンアテンダントが廻ってこない着陸直前に写真を撮ったのです。それが何、と言われれば何の価値もないのですが、ダメと言われるとやりたくなるのが人の常であります。そのくせ、東ベルリン空港で東ドイツのビザがないために入国拒否され、バスで西ドイツ、西ベルリン国境まで強制送還された際はビビって写真を撮る余裕すらありませんでした。(強制送還されることは事前にわかっていたのでサプライズではありませんでしたが言葉がわからず、雪が降る山林の中、バスが何処に向かうのかもわからず、単身旅行の身となればそりゃ心配でした。)

 禁止行為は目的意識を持ってやる場合と上記の話のように物心でやる場合がありますが、中国やロシアなど監視が厳しい国でやると一発アウトになります。アステラス製薬社員が帰国間際の北京空港で捕まり、先般、裁判で有罪判決が出ました。3年6か月の刑期は司法取引をしたこともあり、短いと思います。私も好きで様々なスパイものの実話や小説を読み続けてきましたが、戦時中なら死刑は当たり前でした。もちろん、死刑になるようなスパイは本物の訓練を受けた人たちでアステラスの社員の方は「協力者」でありました。では誰に協力していたのか、そこをメディアはあまり報じなかったのですが、日経がようやく「公安調査庁」だと報じました。私は以前から気がついていました。同氏が捕まったのち、そのような暗示もしたと記憶しています。暗示に留めたのは間違っていたら大変なことになるからですが、間違いはほぼないと99%の確信は持っていました。

 なぜわかったのか。こんなのは簡単です。まず、日本には正式な諜報組織はありません。ただ、一部の政府部門がその内部にそれを部署として持っています。内閣調査室を中心に外務省、警察、自衛隊、法務省です。そして法務省の傘下に公安調査庁があるのです。なのでここから消去法で類推すると分かってしまうのです。内調(内閣調査室の略称)は基本的に情報の吸い上げ機関です。極端な話をすると内調が会議を招集すると外務省、警察、防衛省、法務省から担当が集まり、情報カードの出し合いをします。当然、各組織は自分こそ良い情報、誰も知らぬ情報を提示したいと考えます。では情報源はどこにあるのか、です。

 警察は基本的に国内の事件絡みが多く、また諸外国の諜報組織(CIAやモサド、MI6など)との連携もあります。海外事情は一部の海外公館に出向者を派遣して現地警察やしかるべき現地組織と連携し、直接情報を取ります。表向きの目的は邦人の安全確保ですが、当然、それ以外の情報収集もします。自衛隊は戦備や社会情勢、局地的な戦争など具体的対象がある情報が主力です。外務省は外交官が世界各地にいるわけですから邦人の安全確保のために当然情報収集活動はします。基本は外交官、自らがやりますが、外交官も数年で交代するので現地で人を囲うことはありますし、そういうケースも知っています。ただケースは少ないと思います。(つづく)
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