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2024-12-26 10:18

ウクライナ戦争の停戦はドナルド・トランプ政権発足後に本格的に協議

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 ウクライナ戦争は2022年2月に始まってもうすぐ3年が過ぎようとしている。初期段階でウクライナ軍が善戦してロシア軍の進撃を止め、西側諸国がロシアに経済制裁を科して戦争は早期に集結するかと思われたが、結局、ロシアは経済制裁を受けても持ちこたえ、戦争は継続している。西側諸国はウクライナに支援を続けているが、そのほとんどはアメリカが負担している。ウクライナ戦争停戦を訴えて当選した、ドナルド・トランプ次期大統領が正式に就任するのが2024年1月20日で、それ以降、ウクライナ戦争の停戦協議は本格化すると考えられる。現状は、ウクライナは東部や南部で奪われた地域を奪還できていないが、ロシア領内クルスク州の一部を占領している。地図を見てもらえれば分かるが、ロシアにとっては喉に刺さった小骨程度のことであるが、やはり、ここを奪還できるかどうかということは重要になってくる。ウクライナとしてはクルスク州を取引材料にして、ロシアから何らかの条件を引き出したいところだ。

 ロシアとしては、停戦協議にはクルスク州を奪還してから応じたいところだ。アメリカの支援が切れる今年1月以降に攻勢をかけて、ウクライナ軍をロシア領内から撤退させ、それから停戦交渉をするということになる。また、自分たちで攻勢をかけなくても、トランプ大統領に停戦協議に応じたいが、クルスク州を奪還しない限り無理だと言えば、トランプ大統領が、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に圧力をかけてウクライナ軍を撤退させるということも外交交渉で出来るだろう。

 停戦後に、平和維持活動として、ポーランドとフランスがウクライナに将兵4万人を派遣するという計画があるという報道もある。ウクライナのゼレンスキー大統領がウクライナのNATO加盟の必要性を訴え、NATO加盟まで、外国の軍隊の駐留を求めるという発言があった。これはロシアを非常に刺激する発言であり、ポーランドとフランス両国の軍隊がウクライナに4万人も駐兵するということはロシアにとって受け入れがたいことだ。ウクライナとしては逆に、外交交渉の材料として、NATO加盟と外国軍隊の駐留を取引材料に仕える可能性もある。ここで重要なのはポーランドである。ポーランドは中欧の大国であるが、同時に、歴史的にヨーロッパ全体に不安定要因ともなる国家である。ポーランドは、反ロシアという点ではウクライナと共闘できるが、ウクライナの南西部ポーランド国境地帯ガリツィア地方には実質はカトリック教徒のユニエイトがおり、ウクライナとの関係が深い。ポーランドがウクライナ南西部の支配を狙っている可能性がある(ロシアがウクライナの頭部を持っていったんだから自分たちもという考え)。

 ウクライナ戦争の停戦交渉はロシアの占領地域はそのままという現状を認めるところが前提となり、ウクライナのNATO加盟を認めるかどうか、外国軍駐留を認めるかどうかというところになるだろう。軍事同盟ではないEU加盟については、ロシアも認められるところがあるだろう。しかし、EU側が負担増大を懸念してウクライナの加盟を認めない。トランプ次期大統領がNATOからの脱退も示唆しており、NATOの力が弱体化し、西側諸国の国力も低下している中で、ウクライナは西側とロシアの間で両天秤をかけるという柔軟な動きが必要となってくる。
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