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2022-11-14 15:11

第3期習近平体制の内政動向

松本 修 国際問題評論家(元防衛省情報本部分析官)
 中国共産党は11月10日、新期の政治局常務委員会会議を初めて開催し、「COVIDー19」の防疫活動に関する報告を聴取して「ゼロコロナ」政策を堅持し、防疫活動の一層の「強化」(中国語:優化)に関する措置を研究、手配した。これを受けて国務院は11日、「地方の党委員会・政府は各地の実態に基づき、責任をもって国家が統一した防疫政策を厳格に実行し、勝手に学校閉鎖・授業中止、工場閉鎖・生産停止、承認を得ない交通遮断などを厳禁する」という条項を含んだ通知を発布した。習近平総書記は、本年に入り既に3月17日、5月5日と前期の政治局常務委員会会議を開催し、いずれも防疫活動の徹底を訴えていたが効果はあがっていない模様である。11月13日現在、中国の「COVIDー19」感染状況は本土全体31地域で国内感染者1,747人に無症状感染者14,325人を加えて16,072人を計上し総計27万3762人となっており、新体制発足とは裏腹に中国の「内憂」は続いている。そうした中、内政上注目すべき事態が発生しており、以下細部みていこう。

 11月8日、習近平総書記・中央軍事委員会主席は、「総指揮」の肩書で中央軍事委員会聯合作戦指揮センターを視察し、「全軍は全精力を戦争に焦点を合わせ、全活動を戦争に力を入れ、戦勝能力の向上を加速して新時代の我が軍の使命・任務を確実に履行せよ」と強調した。視察には新期の中央軍事委員会メンバー全員が同行し、習近平以下服装はカーキ色の「砂漠迷彩」戦闘服・戦闘靴で統一されていた。この格好は本年旧正月(2月1日)前、1月28日の中部戦区司令部(北京)視察時と同じものであり、習主席のお気に入りなのであろう。そして、こうした軍事施設の視察訪問は異例ではない。5年前の2017年11月3日、前期党大会直後も習近平ら中央軍事委員会メンバーは同指揮センターを訪れ、「全軍は各種活動を戦って勝つ能力に集中するという明確な態度を推進せよ」と表明していた。しかし、当時の服装をみると着用した迷彩服は陸海空軍、ロケット軍の各軍種(兵科)ごとにバラバラであり、全く「聯合」統一されていなかった。この5年間で軍の指揮系統における一体化・統合化が進展したということであろうか。

 また11月13日、広東省、上海市に続く地方トップの人事異動が相次いで確認された。今期、政治局委員入りした尹力・福建省党委員会書記60歳が交代し、後任には周祖翼・人力資源社会保障部長57歳が就任した。そして同日、北京市党委員会書記を兼務していた蔡奇・政治局常務委員・書記処書記67歳の兼職がとれて後任の北京市トップに尹力が就任したのである。「習近平一派」である蔡奇は漸く「党務」専任となり、中国共産党の日常業務を主管する書記処を筆頭書記として仕切ることになった。しかし、小生はこうした人事を福建省、北京市と現場で仕切ったのが「習近平の学友」である陳希・組織部長69歳というのが異例だと思った。従来、中国共産党中央機構における重要部門はイデオロギー担当の宣伝部と党内人事担当の組織部、及び弁公庁(総合事務局、総務部か)であるが、李書磊宣伝部長(前副部長)58歳以外は、今もって陳希組織部長と丁薛祥弁公庁主任60歳が前期のままであるのは「習近平のお気に入り」とはいえ、側近の「偏愛」重用人事ではなかろうか。他方、今回の拙稿作成の過程で発見した「福のある地名」とされる福建省発信のネット情報によると、中国共産党の政治局委員・書記処書記26人の内、約30%を占める9人が福建省における活動・生活経験者であったという。彼らは政治局常務委員の習近平・蔡奇、政治局委員の尹力・李書磊・何衛東軍事委員会副主席・何立峰国家発展改革委員会主任・陳文清政法委員会書記(前国家安全部長)・黄坤明広東省党委員会書記(前宣伝部長)、書記処書記の王小洪政法委員会副書記(公安部長兼務)であり、蔡奇・黄坤明・王小洪の3人は福建省出身である。偶然の人事配置の可能性もあるが、これら陣容からも「対台湾シフト」の強化と見なされるのであろうか。

 最後に11月14日、習近平総書記・中央軍事委員会主席・国家主席は10月の中央アジア訪問に続く本年2回目の外遊(19日までインドネシア、タイを訪問、G20会議・APEC会議にも出席し米中首脳対面会談も実施)に出発する。中国メディアは、こうした習近平の外遊活動を「Xiplomacy」(Xijiping Diplomacy)と称して喧伝するが、小生の関心は随行者にある。また、一連の外遊活動の内容については稿をあらためて述べたい。
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