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2021-08-16 20:23

靖国神社参拝問題を考える

中山 太郎 非営利団体非常勤職員
 毎年終戦記念日となると、閣僚などの靖国参拝が騒がしくなる。と言っても国際的に問題にするのは、中国と韓国の政府や一部の人たちである。靖国参拝については、「政教分離」と「A級戦犯の合祀」の2大論点があり、国民の意見が分かれている。前者については、今でも憲法違反の活動にあたるとして、訴訟が起こされたりしている。記録しておくべきなのは、1985年に中曽根首相が「公式参拝」を試行したが、国内外に問題があることがより浮上したので、トーンダウンさせた。同首相は、合祀の分離などを試みたりしたが、ご遺族のうち某家が大反対をしたので取りやめた経緯がある。この靖国神社存続については、厄介な宗教問題なので、GHQとしてもだいぶ頭を悩ました。「信教の自由」の観点から擁護する論者、WAR SHRINEだとして廃止を唱える論者と様々いたようだ。その中で、カトリック神父の要請が多きかったともいわれる。そもそも、カトリックは、その土地の権力者に寄り添うこともいとわない性格を持つと言う学者もいる。それ故、同じカトリック教徒の米のバイデン大統領の援護で、最近バチカンの法王が中近東を訪問し、遥か昔に景教として、カトリックから排除された信者の同地域に残存している人たちを、温かく迎い入れるとの発言をしてもいる。戦前の1936年にも、日本におけるカトリック教徒の靖国参拝について、愛国心の表明として容認する旨の訓令を出している。しかし、2007年日本カトリック司教団の声明では、戦後に日本に新憲法が成立したこと、国家神道が解体され靖国神社は今や一宗教法人であり、バチカン側も第二バチカン公会議(注:従来よりだいぶ踏み込んだ民主化路線が取られたと言われる)を経たことから、教会の路線も変わってきているとして、1936年の訓令を否定してもいる。

 バチカンの対中国対応についても、中国における司教など幹部の任命を黙認する姿勢が強いローマ法王に対し、香港、台湾の教会幹部の一部は、法王は中国の怖さ、狡さを知らない過ぎると猛反対しているともいわれる。米国だけが国論が分裂しているわけではないのだ。ちなみに、中国おける信者数は、政府に属する教会と地下教会の双方合わせ、約1千万人ともいわれる。ちなみにプロテスタントは、カルトに近い新興宗教的なものも含み、約1億人以上、中国共産党員よりも多いと言われている。中国の清朝末期に国を分裂した太平天国の乱は、キリスト教を取り入れた拝上帝教が起こしたものだ。韓国も500万人ほど信者がいて、今の文大統領夫妻は敬虔な信者で、毎日曜日教会でミサを預かる。日本は極めて少なく、40-50万人と言われるが、美知子前皇后さま、麻生副総理など要路に信者がおられる。安倍前総理夫人は、カトリックの教育機関である聖心で小学校から短大まで学んでいる。安倍前総理もバチカンを訪問し法王と会見している。バチカンは日本を極めて重要視しているという。1980年には、ポーランド出身のヨハネ・パウロ二世教皇が日本のA級戦犯、B、C級戦犯として処刑された人々へのミサをサン・ピエトロ大聖堂で挙行している。

 日本は敗戦後、軍国主義を反省し、国際社会への復帰が許された。A級戦犯の同じ日本人としての苦悩もわかり、ドイツのように全てナチが悪いので、その他の国民は同じ被害者だという逃げ方にはうなづけないところがあるのだ。しかし、国際社会で皆が生き抜くためには、身を切る思いが必要な時もあるのだ。昭和天皇陛下のそうした苦悩も無視したM宮司は、前任者宮司が急逝し、ポストが転がり込んできたことに乗じ、前任者の苦心も思慮せず、やみくもの合祀に走り、天皇陛下が参拝できなくなっている。いまの世界で、ナチや日本軍国主義者が同じように扱われる中で、もしそれに反する行為は、日本へ途轍もない重荷を背をわせるということが分からい人たちがいて、個人のすかっとさわやかをただ求め、あとは野となれなのだ。そして、国際的に靖国参拝がこれだけこじれたのには、筆者の見方では、2001年の小泉総理の毎年の公式参拝が大きいと思う。筆者は、幼児期に静岡県清水市(今静岡市に合併)にいて、そこから外地へ行かれる多くの若者たちを見送った。今でも、お饅頭を食べるときは、心身身構えてしまうが、若者たちが幼い私を見て、故郷の弟などを思い出すのか、「お父さんやお母さんの言うことをよく聞くのだぞ」「元気に育て」など言いながら、当時貴重な、出征前の兵士たちにだけ配られるお饅頭を分けてくれた強烈な記憶があり、人生の基調となり、常に思い出される。彼らが、同輩と靖国で会おうと述べていた言葉も忘れえぬものだ。時間が許せば靖国へはよく参拝する。公費がない中での神社の人たちの立派な仕事ぶりにいつも感心しながらである。私の知人によると、小泉さんは、総裁選挙の相手の橋本さんが靖国の遺族会会長を務めながら靖国参拝をしないのはけしからんと述べ、それが妙に人気を博し、それをやみくもに喧嘩外交の手段としてしまったのだ。橋本さんは遺族のためにいろいろ陰で尽力していたのにだ。

 当時の中国は、二分論、すなわち、日本国民が悪いのではなく、軍国主義者たちの悪逆が、悪いのだとの論で国民を説得していたので、直面した担当達は皆困り果てた。中国人特有の権力闘争論から、自民党内の福田派の田中派への復讐のためだと述べる中国人知人もいた。今回も参拝者の中の発言で、祖国のために戦場へ赴き命を落とさなければならなかった方々に対し、哀悼、敬意及び感謝の気持ちをささげることがどこが悪いと述べる方もおられたが、中国、韓国ともわかる人は黙っている。一部反日の過激者たちを喜ばせるだけだったのだ。小泉氏は、2001年北京を訪問し、江沢民主席に面会したが、当時の記録に、江沢民が歴代の総理の中で、小泉氏が一番中国と日本の友好関係発展のために考えていると述べた旨がある(まさか、毎年参拝するとは思わなかったのだろう)。歴代日本の総理は、日中戦争発端となつた北京近郊の盧溝橋にある「中国人民抗日戦争記念館」を訪れる。そして揮毫する。村山総理は、中国におもねり、歴史に学びーーと書いたが、歴史という字が当て字だった。小泉氏は、「恕」と記した。辞書で引くと、忠恕:真心と思いやりがあることある。筆者の歴史を専攻している日本人によると普通「忠恕」で意味を成すので、「恕」だけというのはと首をかしげる。奇人総理の面目躍如たるものがある。そして、これだけ火種を残しながら、今や、靖国など忘れておいでのようだ。アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが、再び政権を掌握することが確実となり、いま米において、20年間貴重な人命と膨大な戦費をかけた戦いの意義が問われている。そして、当時のシラク仏大統領が猛反対したことをかえり見ず、反フランスに走ったことの思慮のなさを反省する論が出ている。中国に就ても、まず相手をよく勉強すべきとの論が出てきだしている。傾聴に値する意見だ。
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