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2021-07-03 09:26

中国共産党創立100周年記念式典における習近平スピーチから考える

中山 太郎 団体非常勤職員
 7月1日に行われた中国共産党創立100周年記念の式典で、習近平国家主席がスピーチをした。内外のメディアが、大きく取り上げており、興味深かった。習は、中国を世界第2位の経済大国とした党の歴史的業績を誇示し、一党支配体制を堅持していく姿勢を示した。各紙が注目し大きく取り上げているのが、スピーチにおける台湾統一への強い意欲についてだ。また最近の欧米との対立を意識しての「外部勢力が我々をいじめ、抑圧し、奴隷扱いすることを決して許さない」との国際強硬姿勢もまた興味深いものだった。台湾統一について「祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の歴史的任務」と述べ、強い意欲を感じさせた。これに触れて、外交評論家の宮家邦彦氏がテレビ番組で、環球時報での、米の海兵隊出身者のゲイル論文を取り上げ「(彼は内部告発をして)中国と戦っても勝てない」と述べているが、こうした中国をミスリーディングする言説は危ない。しかしまた宮家氏は「台湾問題は共産党の正当性の一丁目一番地。言わないと中国共産党ではない。それにもしやって(台湾進攻をして)失敗したら、その政治的圧力、責任追及は、甚大となる恐れがある。(侵攻は簡単ではない)」と述べている。

 また、藤崎元駐米大使は、このスピーチの前に書かれたブログで、大意次のように述べている。「台湾進攻は、メディアが騒ぎ立てているほど目下の緊急事態ではない」「オバマ時代に中国が南シナ海などを取り込んでいたのを放置していたつけが今やってきており、現状維持で中国には時は有利になる」、「一方、尖閣については民主党政権時代の、(筆者の個人的な見解を付け加えると同政権の対中外交の失敗、今の自民のような中国にチャンネルのある二階氏のような人材はいなかったため)、日中関係の一挙の冷え込み、中国はその後公船を尖閣周辺の接続水域に連日送り込みをするようになった。彼らの主張は尖閣は中国の領土であり、自国の領海、接続水域に入っているだけであるというもの。今年は自ら公権力を行使しうるよう海警法を制定した。」「中国公船の継続パトロールにより日本による実効支配が確立していないという論拠を作っているつもりだろう」詳細は、中曽根平和研究所のブログを閲覧してほしいが、筆者が注目する論は、尖閣は、特殊部隊による電撃作戦で、ある朝起きてニュースを見ると五星紅旗が、翻っている事態もありうるとしていることだ。国際社会では、超大国の米とそうでない国の差は、残念ながら雲泥の差があるのだ。藤崎大使の一つの、ぞっとするこの見方が現実にならないことは願う。

 中国理解についてより助けになる最近の論述は、「WEDGE」7月号の岡本隆司・京都府立大教授のそれは参考になる。「中国は厖大な大陸であり、そこには多種多様な言語・習俗が混淆し、せめぎあって暮らしてきた」「西側諸国の常識と前提が異なる」「無理解による安易な言動をやめ 『異質さ』の根源理解が必要」「(習近平は)歴代の政権と同じく『中国』の解体を阻止するという歴史的な課題に立ち向かっているだけ」「そこに無理解なまま、言論弾圧や思想統制など『現在』の問題ばかりに目を向け感情的な中国批判をぶつけて満足したり、領土や主権に関わって不用意な譲歩をしたりするばかりでは、おそらく事態は好転しない」
中国と対峙するうえで大事な見方だと思われる。

 国際情勢が千変万化すると思うのは、70年代に豪州に滞在していた時、フランスと豪は犬猿の仲で、知り合いとなったメルボルンの領事は、過激派に館内全体に灰をぶちまかれ散々な目にあった。それだけでなく、同地にあるフランス人学校にまで嫌がらせをしてきて、豪州人は最低な奴らだとぼやいていたのを思い出す。その頃、フランスは南太平洋で盛んに核実験をしていた仕返しなのだった。日本も最近、南極捕鯨船に豪の過激派からひどい嫌がらせをされたことを思い出させるし、安倍政権時代、豪は潜水艦を日本から入れることでほとんどまとまっていたのを、マクロンなどの巧妙な反撃で見事フランスにさらわれてしまった。7月2日の邦字紙は、フランス当局がユニクロなどを中国新疆ウイグル自治区での人権問題をめぐり、人道に対する罪の隠匿の疑いで捜査を開始と報じている。対象は、日本だけではなく仏のSMCP、スペインのインディクス、米のスケチャーズも入るが、この動きも豪の戦略研究所の報告書を基にしているようだ。非白人国の日本が狙い撃ちにならないことを願うものだ。
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