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2020-12-13 07:30

菅政権に望むしたたかで二枚腰の外交

中山 太郎 非営利団体非常勤職員
 2019年に安倍総理が訪中し、中国と第三国での経済協力につき合意を見た。それに対し、今、米国が中国と経済戦争の真っ最中に、日本は裏切り者と見られないか等の心配の声も強かった。今般妥結を見たRCEPについても、中国に乗っ取られるとの危惧の声も聞かれる。日本としては、今の中国の対日微笑外交は便宜的なもので、いつ中国側の意向で関係を急変させるか分からないということは織り込み済みだ。これは、日本の盟主、米の対日事情も同じだ。

 今や米に代わり自由経済の保護者を自認する中国は、TPP11への参加をも匂わせてもいる。中国が入り、ルール無視の滅茶苦茶になることを恐れる人も日本には多い。しかしよく考えれば、これは、中国にとり難しいかじ取りとなるのだ。TPPの厳格なルールを尊重し受け入れなければならない一面もある。中国への対応には、カナダはじめ日本の味方となる多くの民主主義国の仲間もいる。脱退した米国だが、今すぐの復帰は無理としても将来的には加入の希望もあり得るのだ。米としても中国と戦争をする気はなく、今の中国の強引な知的財産略奪など、無理筋の不公正なやり方の是正が第一で、やはり中国市場でのもうけを狙ってもいるのだ。

 今回のRCEPのまとめについては、議長国のベトナムが、強く主張し日本としても飲まざるを得なかった事情もあるようだ。国際関係では100%の成果などありえなないのだ。日米などの民主国家では、国民の対中批判の声は政治に反映されるが、ベトナムは共産国なのだ。国民レベルでは、中国の最近の強引なのさばりに嫌中感が幾ら強くとも、政権の事情で動く率が高い。中国は最近経済面での対ベトナムへの影響力拡大に力を注いでもいる。直接投資は、約40億米ドル、香港からの70億米ドルと合わせると、海外からの投資としてはダントツだ。日米が、中国から経済取引を一部引き上げ多元化を狙うように、中国も自国の労働コスト上昇を受けて、コストの安いベトナムへの産業移転があるのは日米と同じ図式なのだ。
 
米の対中締め付けで、中国国内での反米感情が強くなっていることは確かであるがあまり過大に考えないほうが良いようだ。筆者が取材した中国人学者は、「『米はもはや以前のような絶対的なあこがれの対象ではない』と言いつつも、知識人たちにとり、やはり米の存在は大きい。今の状態はラブ・アンド・ヘイトと言ったところだ。今、中国の独裁政治体制が上手くいっているようだが、多様な意見の表出が可能な米国政治のように、たとえ失敗してもまた修復が出来る国の方が羨ましい」と述べている。変化極まりない最近の国際情勢の中で、中国も米国も皆必死なのだ。日本は、米中の間でもがき苦しむ場面もこれから増えることだろうが、したたかに、二枚腰で対応すべきだ。
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