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2019-11-12 19:34

(連載1)中国デジタル通貨の潜在的脅威

倉西 雅子 政治学者
 民間企業であるフェイスブックが打ち上げたリブラ構想が国家の規制と云う巨大な壁に阻まれる中、中国がデジタル通貨を発行するのではないかとする憶測が流れています。デジタル人民元はリブラとは違って国家の後ろ盾があるものの、この構想に潜むリスクはリブラと何らの変わりはありません。ブロックチェーンといった先端的なフィン・テック開発に国家を挙げて取り組んできた中国のことですから、デジタル通貨の発行は技術的には可能なのでしょう。その一方で、発行形態や制度運営といった面については不明な点が多く、この不透明感はリブラ構想と共通しています。
 
 今日、ネット取引やスマホ決済が日常化した中国では、同7社がデジタル通貨を一斉に使用するとなれば、消費者レベルにまで一気にデジタル通貨が拡がります。もっとも、デジタル通貨の流通が中国国内に限定されているのであれば、他の諸国が同通貨に神経を尖らせて警戒する必要はありません。問題は、次の段階、即ち、デジタル人民元の国際化、並びに、人民元経済圏の形成のステージに移る時に生じます。
 
 中国の場合、中国人民銀行が「通貨が最終的に米国の消費者にまで利用可能になることを望んでいる」と述べる通り、当初から自国デジタル通貨の使用は海外をも想定しています。むしろ、人民元の国際基軸通貨化こそ、人民元のデジタル化の最終目的なのです。それでは、何故、デジタル化すれば、実現不可能であった‘中国の夢’が達成されるのでしょうか。
 
 その答えは、既存の銀行間決済システムを経ずして国境を越える点にあります。2018年6月、アリババの子会社であるアント・フィナンシャル(アリペイ運営会社)は、ブロックチェーン技術を使ってフィリピンへの即時送金システムの実験を行っており、‘米国の消費者まで利用可能’にする技術を開発しています。国際基軸通貨を発行するアメリカは中国と距離を置き始めていますので、どちらかといえば他の中小諸国の方がチャイナ・リスクへの警戒心が不足しているかもしれません。(つづく)
 
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