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2019-05-14 20:07

(連載1)台湾に‘郭総統’が誕生するリスク

倉西 雅子 政治学者
 台湾では、2020年1月に予定されている総統選挙に向けて、早、前哨戦が始まっているようです。与野党の候補者が乱立する中、4月17日には鴻海精密工業の郭台薫会長も、国民党からの立候補を表明しています。直近の世論調査では、現職の蔡総統を大きく引き離し、支持率においてトップに躍り出たそうですが、郭総統の誕生にはリスクが伴うように思えます。
 
 郭氏に関する最大のリスクが中国関連であることは、マスメディアが報じる通りです。郭氏は、‘台湾の政界’と柵のない新鮮さが人々から支持を集める要因となっていますが、‘中国の政界’との関係は周知の事実です。今年の年初に当たって中国の習近平国家主席は、台湾併合への並々ならぬ決意を内外に示しましたが、中国にとりましては、‘平和裏’に台湾を併合するためには親中政権を何としての誕生させる必要があります。2020年1年の次期総統選挙こそ、独立派の民進党から親中派の国民党への政権交代を実現する千歳一隅のチャンスとなるのであり、このプランを実現するために候補者として白羽の矢が立てられたのが、郭氏であったのではないでしょうか。
 
 この推測を裏付けるかのように、郭氏の立候補には、純粋な経営者としての判断から逸脱した別のベクトルが働いているように見えます。郭氏が総統に就任した場合、企業の会長職とは兼任できないため、シャープを含む鴻海グループの経営が危ぶまれているにも拘わらず、敢えて出馬を決意したのですから。もちろん、グローバル企業の経営者では飽き足らず、総統の地位を手にしたいという権力欲や名誉欲が働いたのかもしれませんが、何れにしましても、同氏は、経営よりも政治を選択しています(ゴーン容疑者もブラジル大統領選への出馬を試みようとしていた…)。
 
 中国側から秘かに立候補の打診を受けて応じた、あるいは、煽てられて野望に火が付き、その気になったのかもしれません。何れにしましても、郭政権が成立した場合、台湾は、総統が操られることで中国のコントロール下に置かれるリスクが極めて高いのです。もしかしますと、鴻海精密工業の設立の時点から事業資金の援助を受けるなど、既に中国共産党の息がかかっていた可能性も否定はできないように思えます(鴻海とは、台湾併合を目的に、‘トロイの木馬’となるよう台湾で中国が育てた企業かもしれない…)。(つづく)
 
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