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2019-04-20 23:15

10%消費税でデフレの“泥沼”抜けられず

田村 秀男 ジャーナリスト
 筆者が先日、10月に実施が予定されている消費税率の10%への引き上げの凍結を求めたところ、さまざまな反響があった。多くは増税時の混乱についてだ。例えば、政府が増税の衝撃緩和策としている中小業者店舗でのキャッシュレス決済に対するポイント還元については、中小業者の受け入れがばらついており、10月までに態勢が整いそうにないという実情。食料品も品目によっては軽減税率の対象になるかどうかの線引きが微妙だ。そんなありさまで、小売りの現場は頭が痛いだろう。

 景気対策としては、防災を名目にした公共投資が地方の特定地域に今回だけ集中するが、人手不足で消化難、しかも翌年は発注が激減する。何という稚拙で計画性のなさか。政府の知性を疑う。折しも、世界景気の先行き懸念により株価不安が高まっている。度重なる消費税増税による経済への災厄に目を背け、10%への引き上げをもくろむ財務省を後押ししてきた日本経済新聞などメディアの多数派の論調は相変わらずだが、一部はビビり始めた。24日付日経朝刊はポイント制解説記事の末尾で、「足元では海外経済の減速を受け、景気の先行きが不透明になっている。3月の春季労使交渉では、大企業でも賃上げ率が18年を下回る例が目立った。増税が消費者心理に与える影響は大きく、消費を支えきれるかどうかはまだ見通せない」と付け足している。安倍晋三政権は結局のところ、新年度予算成立後、4月初めから5月下旬にかけて、消費税増税の先送りに踏み切るとの観測が市場に出るのも無理はない。

 拙論はそんな浮ついた景気観に同調するつもりはない。海外経済不安は昨年から始まっている。デフレ圧力が続く間は消費税増税すべきではないと、いたってシンプルに繰り返してきた通りだ。1997年度の増税以来、日本経済は慢性デフレに陥り、20年以上たっても脱デフレ成らず自滅、という惨状を憂慮するのだ。デフレ病はアベノミクスが2012年12月に始まったあと、症状はかなり緩和したが、14年度の増税でぶり返したままだ。

 1997年度増税前からと2014年度増税前からの各5年間の実質正味家計消費の推移を見ると、一目瞭然、97年度増税後よりも、14年度増税後のほうがはるかにショックは大きく、しかも元の水準に回復しないまま、家計消費が低迷を続けている。97年度、14年度とも駆け込み消費と増税後の落ち込みが激しかったのだが、税率5%よりも8%のほうがはるかに大きな重圧となって、家計を苦しめている。政府は今秋の増税ではポイント還元などで駆け込み消費を和らげるので、反動減、消費不況を避けられるというが、浸透が疑わしい期間限定の一時的措置だ。税率10%という重税で消費は際限なく低迷が続くだろう。
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