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2017-10-14 11:15

北朝鮮の弱みにつけ込み稼ぐ中国企業

田村 秀男  ジャーナリスト
 いよいよ衆院解散、そして総選挙だ。北朝鮮情勢を国難としてとらえ、日本の危機を国政レベルで考える機会には違いない。そこで、気になるのは中国の対北政策だ。筆者は1年以上前から、トランプ米大統領の言う「ロケットマン」こと、金正恩朝鮮労働党委員長が核・ミサイル開発にいそしむことが可能なのは、中国からの貿易・金融支援があるからだとし、中国に対する米国の甘さを指摘してきた。それがここに来て、トランプ米政権が気付き、北朝鮮と取引する中国の企業や大手銀行に対し、制裁すると言い出すと、中央銀行である中国人民銀行は大手の国有商業銀行に対し、北との金融取引を打ち切るよう通達を出したという。

 中国の習近平国家主席は10月後半の党大会を控えている。米国から金融制裁を受けると、中国の大手銀行が国際金融市場でドルを調達できなくなり、信用不安が起きかねない。対米関係を重視する党内の勢力に批判を受ける。習政権としては、ともかくトランプ政権に協力するそぶりを示し、報復を避けるしかないと判断したのだろう。北の対外貿易の9割は中国が相手である。北は国連制裁を受けて主力の輸出項目である石炭輸出が大幅に減ってはいるが、中国からの対北輸出は増え続けてきた。その結果、中朝貿易は今年に入って以来、中国側の一方的な輸出超過になっている。この対中貿易赤字分は外貨で支払わなければならないが、外貨は不足している。その不足分を中国の銀行が信用供与しているから、貿易を拡大できた。しかし、中国の銀行がカネを貸さなくなれば、支払えなくなるので、北はモノを買えなくなる。そこで、北に対する制裁圧力が高まるはずだ。

 だが、これまでトランプ政権をだまし続けてきた習政権のことだ。約束通りに中国が北を締めつけるだろうか、疑問が残る。そんな中、米軍の情報関係者と意見交換したところ、やっぱりそうか、という話を聞いた。国連安全保障理事会は9月11日、6回目の核実験を強行した北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。石油禁輸を求める米国に反対する中国が石油輸出の上限を決めることで妥協したからだ。実際には石油の対北輸出量が最大になった昨年の水準を上限にしており、制裁の効果のほどは疑わしい。ところが、平壌から伝わってくるのはガソリンなど石油製品の高騰だ。

 米軍筋は「中国の輸出業者が北の弱みにつけ込んで、石油製品の供給価格をつり上げているからだ」という。それは今に始まったわけではなく、原油の供給価格は国際相場の2割程度高く設定しているという。対北石油製品平均輸出価格を、対韓国、対ベトナムと比較すると、確かに割高だ。なるほど、抜け目のない中国企業はがっぽり稼いでいる。ロケットマンはミサイルの矛先を太平洋ではなく、反対方向に向けてはどうかね。
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