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2017-05-25 15:00

(連載1)韓国の文大統領を襲う3つの嵐

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 韓国大統領選が行われ、第19代大統領に文在寅氏が選出された。保守政権から革新政権に方向転換することになる。中央選挙管理委員会の発表によれば、文氏は1342万3800票(得票率41.08%)を集め、洪準杓氏は785万2849票(同24.03%)で、安哲秀氏は699万8342票(同21.41%)であった。大差で文氏が当選したことになるが、洪氏の追い上げも注目される。洪氏は世論調査では低迷してきたが、選挙の直前に、保守層の支持を集め、安氏を抜いて、2位になった。

文氏が得票率50%を超えるかどうかも一つの注目ポイントであったが、それには及ばなかった。確かに文氏と洪氏との間には差はあるが、選挙前の世論調査の時よりも差は縮小している。洪氏と安氏の得票率を足せば、45%を超えるわけで、文氏の得票率を超える。韓国の政治情勢の変化によってはまた不安定化する可能性はある。その意味でも2位争いも注目される。朴前大統領の罷免から行われた大統領選挙だけに、保守系候補者は不利であったが、ともかく2位を確保できたことで、文氏の失策を狙う立場を得たことになる。

 現在の韓国を取り巻く環境は厳しい。まさに嵐が吹き荒れている感じだ。この嵐は静まるよりも、さらに荒れ、暴風化しそうだ。まずは不況の嵐だ。韓国は1997年のアジア通貨危機を乗り越え、その後は順調な経済発展を行ってきた。60年代の日本をみるような奇跡的な経済成長を実現し、世界における存在感も強くした。特に中国との関係を強め、中国の驚異的な経済成長の恩恵も受けながら、発展を遂げた。しかし、中国の経済成長が停滞するにつれ、韓国経済の発展にも陰りがみえてきた。そこに朴政権下での崔順実ゲート事件が勃発し、サムスンなどの大財閥を巻き込む事態に発展した。さらに北朝鮮の挑発行為からTHAAD配備問題がクローズアップされ、中国は様々な形で韓国叩きを行いつつある。これは韓国経済にボディブローのような打撃を与えつつある。

 文大統領は、左翼政権であるわけで、財閥改革には積極的に取り組むだろう。しかし、財閥改革は韓国の競争力を削ぎ、景気の低迷の長期化に繋がる危険性も指摘されている。財閥改革はこのような経済危機の状況ではなく、順風の中で実施しておきたかった課題だ。また、韓国の労使関係は敵対的で、改善が求められるが、文氏のポピュリズム的発想、左翼的発想では、「国民の痛みを伴う改革」は進まないと予想される。日本との貿易はさらに停滞しそうだし、アメリカ・トランプ政権は米韓自由貿易協定(FTA)の破棄を要求してくるかもしれない。ほぼ全ての要素が韓国経済にネガティブな状況だ。(つづく)
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