国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-12-24 18:46

(連載2)北方領土返還への危険な賭け

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 だが、日露関係においてはやはり躊躇がある。日本とロシアの関係はアメリカとの関係もあり、時にギクシャクする。実際に現在も、アメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏勝利を有利にするためロシアがサイバー攻撃を仕掛けたということで、オバマ大統領はロシアに報復措置を加えるという。またEUは首脳会議を開き、ウクライナ情勢を受けて続けてきたロシアへの経済制裁を、来年7月末まで延長することで一致したという。日本が経済協力を進めようとする流れとはかなり異なる姿勢だ。

 まだまだ、何が起こるかわからない。確かにプーチン大統領とトランプ氏は協力的な関係のようにはみえるが、何かを契機として一気に対立するというシナリオも考えておかなければならない。つまり、日本は大きな投資をしても、その投資が実を結ばない状況が考えられるのだ。北方領土も返還されたわけではない。つまり外交関係が冷えるなら、なんの成果もないままに投資しただけが損となるリスクがある。日本としては約束なき危険な賭けに乗らされたという感じだ。プーチン大統領の駆け引きのうまさが際立つ。

 ただ、今の状況であれば、こうしたリスクを冒さなければ、北方領土の進展の緒さえ見いだせないということは確かだ。安倍首相もこのリスクはわかった上での判断だろう。経済協力の合意で、北方領土問題が解消したというようなメッセージとロシアがとらないように、厳しく要請し続けることが必要だ。北方領土に限るなら、私は部分的でも国後島の返還が決定的に重要だと考えている。日本が本気で投資するならやはり国後島は欠かせない。漁業、観光などにおいて重要だ。

 私の提案は2島半(歯舞群島、色丹島、国後島の西半分)の返還だ。これによって本格的な経済投資が可能になり、ロシアにとってもプラスになる。いずれにしても、これからは根気と迫力の勝負になりそうだ。強権プーチン大統領を攻め落とすことができるかどうか。今回の合意は、日本にとっては危険な賭けだ。この賭けに勝つことができるかどうか。結果が分かるには、少なくともまだ数年はかかりそうだ。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会