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2016-11-19 15:43

(連載2)北朝鮮の崩壊は米中を巻き込んだ紛争に発展しうる

児玉 克哉  社会貢献推進機構理事長
 このように考えた上で、北朝鮮崩壊のシナリオを考えてみよう。まず、第一に周辺諸国は北朝鮮の崩壊を望んでいないということを確認したい。韓国にも中国にもアメリカにもあまりに不確定要素が多すぎて、何も特別なことが起こらず、このまま北朝鮮が独立して存在することを望んでいる。日本もそうだ。問題は、北朝鮮が核開発やミサイル開発をして、状況を変えようとしていることだ。こうした動きは国際情勢を不安定化させる。特に経済的な問題を抱える北朝鮮は、内部からのクーデターなどの可能性も秘める。その可能性が高まれば、自らが仕掛け人となって崩壊させようという動きが中国からもアメリカからもありえる。金正恩氏の威嚇は、状況を悪化させることにつながるのだ。
 
 シナリオとしては次の3つが考えられる。(1)まず、内部からのクーデターである。完全に内部からのクーデターの可能性はある。ちょっとした動きも察知され、粛清の対象になるリスクがある。ただ反発する側もこうしたシステムを学んでいる。いかに気づかれることなく、一気にクーデターを行うか。クーデターが起きても劇的な変化はないかもしれない。トップが変わり、そのトップの力量と見識によって北朝鮮の方向が決まる。おそらく金正恩体制よりもより中国寄りを明確にした政権に変わるのではないか。(2)次に、中国主導のクーデター(暗殺)である。中国が金正恩最高指導者を見切る可能性がある。中国が主導してクーデターを起こし、完全な中国傀儡政権を作る方向だ。よほどの北朝鮮の抵抗がなければ、傀儡政権樹立という形だろう。抵抗があり、混乱するようになれば、強制的な併合もシナリオの中にあるかも知れない。(3)最後に、アメリカ主導のクーデター(暗殺)である。中国とアメリカが金正恩氏の暗殺競争をしているとさえ言われる。アメリカ主導で北朝鮮を崩壊さえ、その後の展開をコントロールしたいということだ。このまま北朝鮮が行き詰まれば、中国は北朝鮮への支配権をさらに強化すると考えられる。ならば一気にアメリカ関与のもとでクーデターを起こし、アメリアの同盟国としての統一韓国を作る戦略だ。
 
 以上のどのシナリオもリスクが大きい。どのような展開になるか、わからない部分が大きすぎる。アメリカと中国の軍事大国がアジアの戦略的重要拠点の覇権を争う形になる。中国は北朝鮮を完全に支配下に入れるなら、次は韓国だ。「歴史的に中国に属し」、「現在は暫定的に帝国主義の配下にある」朝鮮半島を中国に取り戻す活動に移る可能性がある。アメリカと同盟関係を持っている韓国は軍事戦略上も目障りだ。中国にとって、サムスンや現代を持つ韓国は経済的にも魅力がある。しかし、アメリカにとっては米韓日の同盟関係はアジアの軍事戦略の基本といえる。それが崩れることは大きなマイナスだ。
 
 日本にとっても北朝鮮の行方は大きな影響を受ける。現在のところ、中国、韓国、アメリカ、日本、ロシアのすべてが金正恩氏に静かにしてもらって現状維持の状態を望んでいる。しかし金正恩氏が静かにしなかったらどうなるか。北朝鮮崩壊後に平和裏に南北朝鮮が統一されるというシナリオはほとんどないだろう。北朝鮮の暴走は、アメリカと中国を巻き込んだ次の争いに発展しかねない。本当の脅威はその展開だ。(おわり)
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